ブックワームのひとりごと

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『汚れた手をそこで拭かない』芹沢央 文春文庫 感想 しょうもない悪意で大変なことになるミステリ

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汚れた手をそこで拭かない (文春文庫)

 

あらすじ・概要

工事のときの脚立、プールの水、映画撮影のやりとりなど、ごく普通の風景の中に謎が生まれる。それが解明されるとき、人間は心を揺さぶられる。人間の何気ない劣等感や悪意、ずるさからうまれる犯罪を描くミステリ短編集。

 

人間ってしょうもないことするよなあ

 

しょうもない動機で行われる犯罪をミステリとして描く短編集。しかし人間ってそういうしょうもないところあるよなあ。という妙な現実味があります。

トリックを使った犯罪なんてそうそう起こらないですが、魔が差して犯罪行為をすることはあるかもしれません。そういう「魔が差す」瞬間を切り取るのが上手かったです。

もしかしたら犯罪なんて一生することがなかったかもしれないのに、やってしまうやるせなさ。イヤミスとも違う、「あ~あ……やってしまった……」という読後感でした。

 

個人的に好きだったのはプールの水に関する短編です。プールの水だけでここまで面白く、かつ小市民的な話を書けるのがすごかったです。逆にこういうの、なかなか思いつかないですよ。派手じゃないから。

映画の話もオチが最悪過ぎてよかったです。後味悪い~!!

 

日常の謎が発生したとして、それはきっと楽しいものではないんだなあ、と思わせられるミステリでした。

サクッと読める平易な文体と短さもよかったです。

 

 

 

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