ブックワームのひとりごと

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『ジョージ・オーウェル――「人間らしさ」への賛歌』川端康雄 岩波新書 感想

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ジョージ・オーウェル――「人間らしさ」への讃歌 (岩波新書 新赤版 1837)

 

あらすじ・概要

『1984』や『動物農場』などの全体主義への批判を小説に書いたジョージ・オーウェル。彼の生い立ちや作家になった後の人生を語りながら、オーウェルの持つ価値観について考える。戦前・戦中、冷戦時代を生きた。ひとりの作家の激動の人生とは。

 

ひとりの物書きが見た戦前・戦中・冷戦時代

普段あまり作家の伝記は読みません。先入観を得る前に作品を読みたいからです。しかしオーウェルの植民地支配の土地で暮らし、社会主義に期待し、また失望した人生のことが気になったので読んでみました。

一人の作家が植民地支配の支配側、戦争、そして冷戦時代を生きた話としては面白かったです。

 

オーウェル自身が「『動物農場』や『1984』は共産主義だけを批判しているのではない」と明言していますが、これらの出版にまつわるごたごたを知ると納得するものがあります。

いわゆる西側であるイギリス内ですらオーウェルの作品の持つ強い政治性を警戒し、作品の一部を削除されそうになります。

ソビエト・ロシアよりは「今はまし」なだけで、どんな政治思想にも権力への傾倒、表現規制は起こりうるというのはしみじみ感じました。

 

オーウェルといえど人間なので時期によっては差別的なことを言っていることもあります。しかし、人間ってこういうものだよなあ、というリアリティがあります。

植民地支配の支配側を経験したことで階級に対する嫌悪感を持つようになったのが、何だか生々しかったです。

 

 

少し時間を遡るだけで植民地支配、戦争、そして冷戦が日常になることは平和な時代に生まれた人間には不思議に思えます。私は1990年生まれ、冷戦終結は物心すらついていなかったので記憶にないです。

 

 

 

『1984』ジョージ・オーウェル 角川文庫 感想 

『動物農場』ジョージ・オーウェル 高畠文夫 角川文庫 感想 

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