あらすじ・概要
技術者倫理。それは机上の空論やきれいごとではなく、技術者としての毎日の仕事に宿るものである。技術者倫理が問われた事故や事件を紹介し、その事件について語りながら、「誇り高い技術者」とは何かを考える。技術者は社会のために何ができるだろうか。
技術者にしかできない倫理的判断がある
技術者倫理というと内部告発や、倫理にもとる物品の制作を拒否するということが思い浮かびがちですが、この本を読むとそういう行為以外にも「倫理的な技術者の行い」が存在することがわかります。
障害者や性的少数者などが暮らしやすくなる技術を発案すること、技術者だけではなく他の仕事をしている人にもきちんと尊敬の念を持つこと、パワハラ、セクハラのない職場を目指すこと、も技術者倫理であるとこの本は主張しています。
「そんなことは技術者ではなくても当然だ」と思うかもしれませんが、それはその通りです。その上で、技術者にしかできない倫理的意思決定もあります。
世の中には技術者ほど技術に詳しくなれない人々もいます。そういう人たちにも説明責任を果たし、技術に対しての信頼を守ることも技術者の仕事です。
個人的には内部告発についての章が面白かったです。内部告発というとはたから見ればドラマチックですが、実際には最後の手段です。その前に社内でコミュニケーションが適切に取られていたり、不正に対して社内で処罰がされていれば内部告発までは至らないのです。
内部告発する前にすべきことのリストが生々しくて興味深かったです。
そしてこれを踏まえると、内部告発されるまで自浄作用が働かない会社というのは病んでいるということがわかりますね。
イスラエルの情報機関が通信端末に爆弾を仕込んだり、アメリカのテック企業が風見鶏な対応をしたりでSNSで技術者倫理について話題になっていました。その関連で紹介されていた本です。
第二版の発行は2012年で、現在のような生成AIの問題やトランプ政権とイーロン・マスクの接近は予測できていませんでした。おそらく今書き直すとしたらそこに触れざるをえなくなりそうです。
現代の状況を踏まえた上での技術者倫理の話も読んでみたいです。
『兵器と大学――なぜ軍事研究をしてはならないか』池内了・小寺隆幸 岩波ブックレット 感想
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