ブックワームのひとりごと

読書中心に好きなものの話をするブログです。内容の転載はお断りします。

『食べものから学ぶ現代社会――私たちを動かす資本主義のカラクリ』平賀緑 岩波ジュニア新書 感想

このブログには広告・アフィリエイトのリンクが含まれます。

食べものから学ぶ現代社会──私たちを動かす資本主義のカラクリ (岩波ジュニア新書 980)

 

あらすじ・概要

現代の社会は、おにぎりひとつ取ってもグローバルなつながりの中にある。食べ物を例に出しながら、グローバル社会と大量生産・消費のシステムを考える。自分たちが当たり前だと思っている経済の常識は、実は常識ではないかもしれない。社会への価値観を変える本。

 

頭のない怪物としての資本主義

話し方は優しいですが、なかなか恐ろしい本でした。

最近話題の資本家といえばイーロン・マスクやトランプ大統領、ビル・ゲイツでしょうが、そういう人たちを追い落としたところで資本主義は終わりません。なぜなら資本主義は個人の意思を離れて巨大化し、その行く末は巨大企業の経営者にも、一国を導く政治家にも、誰にもわからないからです。

なぜ富が偏在するのか、需要と供給を考えるだけでは社会は幸せになれないのか、を食べ物の流通と輸出入を通して解き明かしていきます。

現代の食料事情は過剰な投機で操られており、遠くから来たはずの輸入食品が国産より高かったり、穀物生産国が偏っていたりするのも、マネーゲームによる操作によるものです。はたしてこのようなからくりや、投機は社会に必要なものでしょうか。

 

資本主義は資本家と労働者との対立であるとよく言われますが、個人の貯金からも投資を促す流れでその構造すら崩れ、この資本主義社会に誰が責任を取るべきかもわからなくなっています。

富を追いかけながらも、その富の先に何があるのかを誰も知らないのです。それはディストピア小説のような経済観でした。

ジョージ・オーウェルの小説『1984』ではビックブラザーというカリスマ的指導者を崇拝していますが、ビックブラザーが何者なのか、そもそも実在しているのか創作なのかは最後までわかりません。この本はまさに「資本主義」がビックブラザーになったような怖い本でしたね。

 

誰もが加害者であり被害者でもあるこの社会で、何もできないままだとは思いたくはないです。

過度なマネーゲームから食料を取り戻して、「健康で栄養のある食事」をみんなが取れる社会を目指すのが大事なのだと思いました。

 

 

『砂糖の世界史』川北稔 岩波ジュニア新書 感想 

『先住民から見た世界史 コロンブスの「新大陸発見」』山本紀夫 角川ソフィア文庫 

シュールなユーモアと絶望の合わせ技 パク・ミンギュ『カステラ』感想