あらすじ・概要
ごく普通の高校生、近藤が所属している文芸部には「魔王陛下」空目恭一がいる。オカルトの知識が豊かで、人間離れした雰囲気の彼を近藤は慕っていた。ある日空目が見知らぬ少女を連れてきたことから日常は変化する。民俗学と学校の怪談が融和した学園ファンタジー。
読み返して変わったことと変わらないことと
久しぶりに読み返しましたが唯一無二の作品だなあと思います。世界観、キャラクターともに似ている作品というのが思いつきません。
あらすじ自体は怪異を退けるという退魔ものですが、その怪異がやってくる元が人の心であり、集合的無意識であるというSFっぽい筋立てがたまらなく面白いです。
「人はこんなにたくさんいるのに、似たような物語を好むのはなぜだろう?」という疑問のひとつの答えであり、物語の人間に害を加える側面を描いた小説と言えるでしょう。
若いころ読んだときは魔王陛下こと空目恭一のカリスマ性にあこがれていましたが、改めて読むと結構人間的なキャラクターだということがわかります。何だかんだ友達思いですし、人が死ぬのはよくないという根源的な倫理観もあります。美術部の八純など、自分に近しい能力がある人間をかばうようなところもあります。
空目のもう一度異界へ行きたいという欲望はおかしいものですが、魔女である詠子とは圧倒的に人間寄りの存在なんだなあと思いました。
そして終盤の展開自体はほぼ同じですが、キャラクターの心理描写や細かい行動にはかなり改稿が入っていました。文芸部それぞれ誰かを思っていたんだな……となりました。最後の亜紀のせりふにちょっとほろりと来てしまいました。
結末は崩壊だったとしても、彼らにとってはかけがえのない青春で、だからこそ失われたことがつらいんですよね。
令和にどうやってこの話やるんだという2巻の「呪いのFAX」回ですが、かなり加筆が入っていて興味深かったです。
どうあがいてもFAXを持っている人が少ないため、チェーンメール要素が減っていましたが。親が持ってても使い方わからない人が多そうです。
しかしFAX以外の媒体では絶対にできないホラーですね。終盤の呪いVS呪いの状態はとても映像映えしそうでよかったです。
そして「このシーン削除されたのか……」と思わぬ形で再登場したのがびっくりしました。起こっていることは最悪ですが、好きだったシーンなので残してくれてうれしかったです。
作品がずっと好きだったのに読み返せなかったのは物語以上に読者である自分自身の変化が怖かったからです。楽しく読み終わることができて、ひとつ宿題を終わらせた気がします。
著者が復刊まで小説家を続けてくれてよかったです。
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