ブックワームのひとりごと

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『ボトルネック』米澤穂信 新潮文庫 自分の好きなものが守れたパラレルワールドで苦しむ少年

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ボトルネック(新潮文庫)

 

あらすじ・概要

兄を事故で亡くし、かつての友人であったノゾミも失ったリョウは、自分が生まれなかったパラレルワールドに迷い込む。そこは生まれる前に死んだ姉が生きている世界だった。存在しないはずの姉、サキと話すうちに、リョウは自分の世界とサキのいる世界の違いに苦しむことになる。

 

救いがないが共感できてしまう青春物語

主人公リョウが迷い込んだのは自分の生まれてこなかった姉、サキが誕生していたパラレルワールドの世界。姉が生まれてこなかったことで作られた主人公は、サキのいる世界にはいません。

積極的でおせっかいなサキは、その影響力で主人公の世界で不運の死を遂げた人たちを救っており、その事実にリョウは衝撃を受けます。

リョウには好意を抱いていた女の子、ノゾミがいますが、ノゾミの精神が不安定であることを知りながらその実情を知ろうとしなかったことにもリョウは傷つきます。

自分が生まれてくるよりサキが生まれてきた方がましだった、その事実がリョウを苦しめます。

 

しかし、この陰鬱な物語が青春小説として成立するのは、ほとんどの人はサキのように生きられないからではないでしょうか。むしろどちらかというと、リョウのように人生を諦めてただただ受容する日々を送っていると思います。

救いのない結末ですが、リョウの過ちが誰にとっても起こりうるものだからこそ、共感を生み、何度も読まれるのでしょう。

 

 

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