ブックワームのひとりごと

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『美術館の舞台裏』高橋朋也 ちくま新書 感想 美術館で働く人たちの事情

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美術館の舞台裏  ──魅せる展覧会を作るには (ちくま新書)

 

あらすじ・概要

美術館で働いている著者が美術館の裏事情について語る。美術館同士の美術品の貸し合いや、美術展開催を支える様々な仕事、美術館のお国柄などを紹介。商業主義にさらされながらも、本当に市民にとって有用な美術館とは何か、考えながら奮闘する。

 

学芸員たちの努力とお国柄

美術館行政が財政難に陥る中、美術館も展示の商業的な成功に目を向けざるを得なくなっています。これは日本だけではなく、世界各国も同じのようです。

素敵な美術品を展示してお金も儲かる。それ自体はいいことのように思えますが、美術は商業的な成功、資本主義的な効率から距離を置くからこそ値打ちがあるとも言えます。美術館の存続と、「市民のための美術とは何か」という思考の間で、美術館の中の人々も揺れ動きます。

 

アメリカ、イタリア、フランスなどの学芸員のお国柄も面白かったです。社会に対する芸術の立ち位置によって美術館で働く人の思想も変わります。

州ごとの個性が強いから政治的手腕も求められるイタリア、ある意味「文化人らしくない」ネアカっぽさを持つアメリカなど、具体例がよかったです。

 

盗難や贋作の話題も、普段大っぴらにされないからこそ面白かったです。ニュースで報道されないだけで、多くの美術品が盗難に遭っているらしいということも驚きでした。でもセキュリティに限界もあるだろうし、あるところにはあるんでしょう。

海外流出してもせめて履歴がたどれるだけでも救いなんですが。

 

否応なく「どの国か、どの美術館が作品を持っているか」というのは政治的な意味を持ってしまうのですが、その点への言及が少なかったのはちょっと残念でしたかね。

 

 

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