あらすじ・概要
博士はなぜ「なのじゃ」としゃべるのか。創作に現れる関西人のステレオタイプや、お嬢様ことばのルーツをたどると、日本における偏見の問題に触れることになる。実際にフィクションに登場する役割語を紹介しながら、役割語まみれの日本のコンテンツを考える。
「面白さ」「わかりやすさ」に潜む偏見
表紙とタイトルに似合わずフィクションの中の偏見について考えさせられる本でした。
お嬢様が話す「てよだわ」言葉、博士キャラが話す「なのじゃ」という語尾、似非っぽい関西弁など、フィクションには役割語という存在しないはずの口調が出てきます。
現実にはこんな話し方をする人はほぼいません。いてもごく少数でしょう。
私は東京で暮らしていた時に「てよだわ」言葉で話すおばさまに出会い、「実在するんだ……」と思いました。そのくらい縁のない人にはない言葉なんだと思います。
しかしこの言葉は東京以外でも広く女性の口調として描かれています。
自分もポップカルチャーのキャラクターが役割語を話すのを楽しんでいるわけですが、それはステレオタイプと表裏一体です。
そして私自身も方言話者として、方言に対する偏見に辟易とすることがあります。
標準語の人間は方言をエンタメか何かだと勘違いしているところがありますね。面白いとか面白くない以前に「生活」ですからね。
でも自分もまた他のマイノリティからしたら無神経なんだろうなと思うこともあります。
複雑な気持ちになる本でしたが、無意識のうちに受け入れている偏見について「実は違うんじゃないか?」と文章にすること自体に値打ちがあるのだと思いました。
『ものの言いかた西東』小林隆 澤村美幸 岩波新書 会話からわかる東北人と関西人の価値観の違い

