
今回はアジアに関するコミックエッセイをまとめました。
中国
『噂のマカオで女磨き!』花津ハナヨ
著者はマカオで女磨きをしようとする。マカオのカジノで体を磨くための資産を作ろうとするが、大して勝てなかった。同時にマカオの食事に舌鼓を売ったり、マカオの人にガイドしてもらったり、マカオの美容情報などについてもコミックエッセイに描いていく。
マカオでカジノに行ったり、ご飯を食べたり。全体的に俗っぽい内容で下ネタも多いです。
マカオに暮らす人々の文化も面白かったです。友人のガイドをするのに家族を連れてきたのはびっくりしました。家族を大切にする文化ゆえらしいです。でも友達に会うのに家族も……?
恋愛も盛んらしく、誰にもいつの間にか恋人がいるというのが興味深かったです。出会いが多いんですかね? それとも恋愛にオープンな文化なのか。
下世話ではあるけど楽しかったです。
『中国少数民族いまむかし 西江・元陽をめぐる旅』まえだなをこ
著者はかつて中国の少数民族の村を旅していた。そしてふたたびその土地を訪れたとき、文化の変容に驚く。中国少数民族の過去と今を比較しながら、少数民族の人たちと触れ合い話し合った記憶をイラストエッセイで描く。
独特の文化もそうですが、異邦人を簡単に家に入れ、歓待する文化に驚きます。こうして見知らぬ旅人を歓待する文化は各地にあると言いますが、実際に体験した人の話を聞くと興味深いです。
都会で犯罪者も含め、多様な人間に接しているとなかなか持てない文化ではありますね。
著者がかつて行った少数民族の村を探そうとしたら、ドラマのような形で予想外のできごとが起こるのが面白かったです。旅をしてると不思議な導きがあるのがいいですね。それだけ世間が狭いということでもあるかもしれませんが。
久しぶりに中国に旅しに来た著者は、少数民族たちの文化の変わりように驚きます。観光客が増え、観光客向けの宿や芸が発達するようになりました。そのことにさみしさも覚えますが、観光客の勝手な願望かもしれません。
『中国秘境紀行 大陸の果てまでいっチャイナ!』日野トミー
中国で働いたことをきっかけに中国に興味を持つようになった著者。そんな著者は中国人の友人とともに中国人の奥地へ向かう、雄大な自然と、多種多様な少数民族の文化を楽しむ。また、中国のパワフルで面白い人々にも圧倒される。
中国人の友人と共に、中国の奥地を観光する漫画です。中国の自然はスケールが大きいです。山も谷も川も日本のものより大きいです。日本の自然ってよくも悪くもこじんまりしているので、これは中国でしか見れないものですね。
町を歩くと民族衣装を着た人々が歩いているのは面白いです。観光客のためもあるのかもしれないですが。
何気なくふらっと入った店がすごくよかったり、逆に外れを引いたり……という予想外なノリも楽しかったです。他人の失敗を笑い話の範囲で読むのは好きです。
『杜康潤のトコトコ三国志紀行』杜康潤
三国志が大好きで、三国志のことを調べるために中国へ留学までした漫画家、杜康潤。著者が中国旅行で巡った三国志ゆかりの土地や、三国志についてのテーマパークの内容を、コミックエッセイ形式で語る。巨大な中国では移動するだけで一苦労で……。
「何を言っているのかいまいちわからないけど熱意のあるオタクの語りを聞いているのは楽しいな……」という漫画でした。
面白さを理解できなくてもオタクが元気に跳ね回っているのを見るのはこちらとしても元気が出ます。
旅行記としては、中国の壮大なのに細かいところが大味なところ、雑なところが面白かったです。
行ってみた三国志テーマパークが倒産して閉まっていることがよくあり、著者は何度もがっかりします。
でも土地や建物のスケールは大きいのでそういう雑さと大きさの交じり合う感じが面白かったです。
『中国人女子と働いたらスゴかった』小道迷子・渡邉豊沢
著者の上司は、小鳥を売っていた女性小鳳(シャオフォン)を中国でスカウトする。一緒に仕事をすることになった著者は、彼女との文化の違いに困惑する。しかし、本当に日本の文化が正しいのだろうか……?
日本人にとってはカルチャーショックなんですが、読んでいるうちに「どうして日本人はこんなに従順でおとなしいんだ……?」という気分になってきます。
日本におけるビジネスマナーや思いやりは一歩海外に出てしまえば、当たり前ではないのです。何でもかんでも郷に入っては郷に従えと思う必要はないですが、考え方の違いを知っておくのは重要だということに気付きました。
小鳳は、交渉事がうまく、最初に著者も小鳥を買わされています。終盤の展示会では、展示会場に来た顧客に1万台の契約をもぎ取ります。
その半分騙すようなやりとりも、ここまで読むとひとつの文化なんだなと思えてきます。駆け引きを常にやり続けていれば、ちょっとした確認間違いも「油断した方が悪い」となるんでしょうね。弱肉強食の土地だ……。
台湾
『アイラブ台湾屋台めし』フジナミコナ
著者は台湾の屋台の食べ物を食べ歩く旅に出かける。夜市を練り歩きスナックや料理を食べ、ジューススタンドでスイカジュースなどの甘い飲み物を買い、マンゴーかき氷に舌鼓を打つ。2巻では舞台は台南へ。異国で気になる料理にどんどん挑戦していくコミックエッセイ。
屋台の調理風景も含めて描いてくれているのが面白かったです。
「この料理なんだろう?」→頼んでみる→想像していない調理方法→食べる→おいしいの繰り返しです。調理法も味もわからない食べ物に挑戦するところがわくわくしました。著者の体験を追っているようで楽しかったです。
絵柄もかわいくて癒されました。
偶然おいしくないものばかり食べてしまう一日があったのも妙にリアルでしたね。
2巻は台湾の南部、台南に舞台が移ります。そこで出会った男性とのやりとりが印象深かったです。著者は現地で出会った日本人男性(台湾在住)と仲良くなり夜市に出歩きます。いい人だからよかったですが、知らない人と海外の夜を過ごすのはちょっと怖いかもしれませんね。
『ボンクラ隊が行く! おいしい台湾食べたいわん』水谷さるころ
コミックエッセイ作家の水谷さるころは、子どもと夫を連れて台湾に旅行に行く言雄になった。台湾のおいしいグルメをみんなで食べまくり、楽しむ。占いに行ってみたり、子連れ旅の苦労を感じたり、台湾を満喫するコミックエッセイ。
台湾で食べまくるだけのコミックエッセイ。よくある観光をさくっと終わらせて、食べる食べる。私は食べ過ぎるとお腹壊すので、これだけ食べられるのはうらやましいですね。
日本では見たことのない料理が多くて面白かったです。クレープっぽいものとか、何かを包んでいたりとか、日本語では何とも表現しがたい料理も……。
それでいて、現地在住の人は「台湾よりも日本の方がおいしいものが多い」とコメントしているのが面白かったです。
確かに観光客は有名な店やおいしい店に行くことが多いので、特にガイドブックに載っていない店の標準値はわからないですよね。
『オモロイ台南』ヤマサキタツヤ
元々旅行好きだった著者は、台湾の南の地域、台南に興味を持ち、各地の食べ物や土地をめぐる。台湾で学ぶ妹と歩いたり、人との出会いがあったり。台南の面白さを紹介するエッセイ。
コミックエッセイと台南で食べたものが描かれている本。食べ物のデフォルメ具合やシズル感がよく、眺めていて楽しい漫画です。
おいしくないものもはっきり書かれていて、その正直さに笑います。でもいくら美食の土地だからと言って、まずいものもありますよね。
コメントからわかるのは台湾の食べ物は薄味なこと。土地柄というものがあるのでしょうか。
ホテルに関しても結構せきららなコメントで容赦ないですね。まあ、台南のホテルのシステムが変わっているのもあると思いますが。
『おいしい台湾:満足したら帰る旅』まえだなをこ
コロナ禍での海外渡航自粛のあと、著者は台湾に向かった。台湾のおいしいものをたくさん食べながら、現地の人たちとも交流する。観光名所に行かず、ひたすら食べては台湾の日常を眺めるコミックエッセイ。
台湾のもの食べまくりコミックエッセイ。
いつ帰るか決めておらず、満足したら帰るという独特の旅の方針が面白かったです。
台湾のスイーツやフルーツ、台湾料理などが目にも鮮やかで楽しかったです。
毎回思うけど、著者の食べっぷりがすごいです。私は旅行先でこんなに食べられません。食べ過ぎるとお腹壊すので……。自分ができないことをやってくれるのは面白いです。
台湾の人の独特のおせっかいさも見られて楽しかったです。台湾の人ってよく話しかけてくるんですよね。昔行ったときもめちゃくちゃ話しかけられてました。
『k,m,pの、台湾ぐるぐる』k.m.p
k.m.p.のふたりは、台湾を一か月旅行する。台湾のおしゃれなスポットや、文化がうかがわれる土地、食べ物や風景を豊富な漫画やイラストで紹介していく。台湾の人々の優しさや、台湾文化の面白さがわかるエッセイ。
一か月も滞在しただけあって、台湾旅行記であまり取り上げないようなスポットもたくさん紹介されるのが面白かったです。歩きつくしたという感じです。
街並みの写真や食べ物の写真はにぎやかでよかったですね。違う文化の街を眺めているのは楽しいです。
台湾の人の人懐っこさや優しさが強調されているものの、嫌な人も登場するところが面白いです。そりゃまあどんな土地にも嫌な人はいるでしょうね。親切にされるのはうれしいですが、全員がそういう人なわけではないですよね。失敗談もあります。
こういうところも素直に描いてしまうのがリアリティがあって面白かったです。
『旅ボン 台湾・高雄編』『台湾・台北編』ボンボヤージュ
イラストレーター、ボンボヤージュは担当編集者とともに台湾へ旅行する。台湾の寺院を見て回ったり、台湾のフルーツや食事に舌鼓を打ったり台湾を満喫する。台湾文化のあれこれにツッコミを入れながらも、自身も台湾についての無知っぷりをさらしていく。
台湾にまつわるコミックエッセイってもともと著者が台湾が大好きであることが多いので、台湾に対して無知すぎる著者が主人公な時点でちょっと面白かったです。
台湾と言えばバナナだと信じていたり、変なエピソードだけ覚えていたり、何でそこまで台湾のことを知らないんですか?
何も知らないひねくれものが台湾の文化に触れたり、おいしいものを食べたりするのが新鮮でした。
特に願い事を書いたランタンを飛ばす話はめちゃくちゃ笑えました。こんな俗っぽくて欲望丸だしなランタン最高。
韓国
『パパ、かいい!』キム・チュンヒ
売れない漫画家である著者は、外で働いている妻の代わりに家事を引き受け、アトピー性皮膚炎の娘を育てている。四六時中かゆさで騒ぎ続け、夜中もかいてやらないと眠れない娘に、夫婦は疲労していく。健康食品や自然療法を次々に試しても、娘はよくならず……。
私はあまり健康食品だの自然療法だのを信じていませんが、この作品はそういうものに頼ってしまいたくなる心理を丁寧に描いていました。
常にかゆがる娘にノイローゼになりつつも、何とか治してやりたい、楽にしてやりたいという一心で、夫婦は食品やローション、自然療法を試します。病気を持つ子どもを育てる苦しみと、子ども自身への愛情で追い詰められているのです。
作中の医者は自然療法に否定的で、私も同意見なんですが、だからと言って著者夫婦の心理状態は、責められないものですよね。
主人公である著者が自分のだめなところも書いているところが誠実でいいですね。外で稼いでいる妻にコンプレックスがあったり、家でひたすら子どもの面倒を見ていることに疲弊したり。それでもちゃんと娘のことは大事に思っています。
『恋する韓国男子! 知りたかった隣の国のおつきあいスタイル』唐南賀彩生
著者は朝鮮語学部に通っていた。そこには韓国のことを学ぶ日本人と、数多くの韓国人留学生がいた。恋多き韓国人男子パク先輩を中心に、日本人と韓国人の文化の差異や、コミュニケーションについて語る。似ているようで違う、韓国の文化とは。
舞台は朝鮮語学科があって、数多くの韓国人留学生がやってくる大学。そういう大学があるんだということがまず新鮮でした。世の中には自分の知らない学校がたくさんありますね。
パク先輩は恋多き男なので、恋愛に対する話が多いです。主人公の友人に断られてもなかなか諦めなかったり、韓国では年長の男がおごるものなので、外食を嫌がったり。それでいて失恋しても次の恋が早かったり。面白かったです。
長幼の序列が厳しい韓国ならではの話も面白かったです。パク先輩は日本語でも常にですます敬語調ですが、韓国では年上の人にはかならず敬語で話さなければならず、ミスを防ぐため年下の人にも敬語で話すようになってしまったらしいです。
年上の人をオッパ(お兄さん)、オモニ(お姉さん)と呼ぶのは知っていましたが、なかなかお兄さんと呼んでくれない主人公にやきもきしているのがかわいかったです。落ち込むところそこなんだと思いました。
『マンガ 出張先は北朝鮮』呉英進
韓国から土木作業のために北朝鮮に出張することになった著者。「将軍様」を崇拝する北朝鮮の人々はどこかおかしく、同時に人間味がある。著者は北朝鮮で起こったことを記録しておくことにした。大きな矛盾を抱えて暮らす北朝鮮住民の、リアルな日常とは。
著者にとって、北朝鮮の人々はディストピアのような国で未だに矛盾した思想を崇拝する異常な民であり、同時に存在しない未来で、隣人になれたかもしれない人々です。
著者は北朝鮮の人々を見て自分の少年時代をたびたび思い出します。経済成長する前の韓国もこのような文化を持っていたわけです。
ほっこりするシーンだけではなく、電話が盗聴されていたり、何かしないか見張りがついていたり、韓国からの荷物をしつこくチェックされたり、言論統制国家らしいシーンもたくさんあります。北朝鮮の人々も、著者に興味を持っても「総括(みんなの反省会みたいなもの)の理由になってしまうから」と仲良くなれません。
そんな状況ゆえに、北朝鮮の人々が食料を分けてくれたり、こっそり内緒で取引をしてくれたりするところに、救われます。普通の人間のやりとりだから。
『私、幸いなことに死にませんでした』キム・イェジ
人前で話すことにひどく緊張する、人付き合いが苦しい。病院に行くと不安障害と診断されたが、治療はうまくいかない。ときに自殺を考えた著者だったが、死にきれず治療を続けることを決意する。二度のカウンセリング、何度も挫折した薬物治療を経て完解を迎えた著者の今の心境とは。
はたから見ると途中で治療をやめてしまう著者にイラっとしてしまうかもしれませんが、精神疾患の人は病院に通うのも一苦労ですし、聞くかどうかわからない治療を続けるのってやっぱり不安なんですよね。薬物治療が第一と言ってもやめたくなるのはわからなくもないです(それでもやめない方がいいけど)
二度の再発を経て、著者は治療「される」のではなく自ら積極的に治療に関わるようになります。自分からカウンセリングに行ったり、合わないけれど薬を出すのは正確な病院に行き、薬物治療を継続したり、自ら自分の病気について調べたりします。
それをきっかけに著者の状況は少しずつ好転していきます。
著者と境遇は違いますが、私も「自分」が治療に積極的になったら、だいぶ具合がよくなったのでこのくだりはわかります。まあ積極的になる元気もない場合もあるんですけど……。それでも能動的になるって大事ですよね。
インド
『インドな日々』速水りんこ
バックパッカーとしてインドに夢中になり、サッシーというインド人と結婚した著者。バックパッカー時代のインドの思い出や、インド人夫の出身地への里帰り、インド特有の文化を面白おかしく描く。インドの冠婚葬祭や家族観は日本のものと異なっていて……。
だいぶ昔の話で現代のインドとは違うようですが、それでも面白かったです。
個性的で優しいインドの人たちとの交流が面白かったです。
特に、著者の夫の実家、ケララでのできごとが興味深かったです。自然豊かな中で暮らす大家族。日本より濃くて大仰な近所づきあい、結婚事情、冠婚葬祭のやり方など知らないことばかりで楽しかったです。
自然豊かなので虫や害獣の脅威も大きく、ほっこりした途端にはらはらさせられるのも笑いました。
バックパッカー文化も面白かったです。インドと言う国にハマってしまった世界各地の旅行者が織りなすトラブルと笑いがおかしかったです。
中には麻薬や死亡事件、取り返しのつかないこともありなかなか恐ろしかったです。
『働く!!インド人 印度定食屋繫盛記』速水りんこ
著者の夫、インド人のサッシーは著者と結婚するとともに日本に移住してきた。日本での就労に苦労したり、トラブルに巻き込まれつつも、自分の店を持つまでになる。著者も将来を案じ、サッシーと喧嘩しながらも、何だかんだとサッシーが店を持つまでを応援する。
著者の夫、サッシーが日本にわたり自分の店を持つまでを著者の視点から描いたコミックエッセイです。
著者の夫、サッシーはワーカーホリックな気質で働いてお客さんに喜んでもらうのが大好きです。著者はそんな夫を案じながらも「自分も仕事大好きだからなあ……」と共感もしています。
彼が店を出したいとなったときも「生活を安定させるためなら雇われの方がいいけど、本当にやりたいなら止めない」という立場を取ります。
こういうことを思うのであればなんだかんだ相性がいいんだなと思いました。
基本ギャグでハイテンションですが、それゆえにさらっと差し挟まれる日本で働く外国人の苦労に何とも言えない気持ちになります。
ポジティブな話を書いてもやっぱり就職差別はあります。
地元にも店を経営している外国人がいますが、こういう苦労があるんだな……と参考になりました。
『速水りんこの南印度は美味しいぞ~!』速水りんこ
バックパッカーとしてインドにはまりインド人と結婚した速水りんこ。彼女は夫と一緒に漫画で南インドの料理を紹介する。スパイスの話、主食であるお米の話、同じくインドにハマっている日本人たちへのインタビューなど、インドと食の情報がたくさん語られる。
インドにおいて料理は薬膳でもあり、食べることを通して体を整えます。
菜食主義の人が多いことから動物由来のものを使わない食べ物も多く、植物だけでここまでできるのか~という感慨も深いです。菜食主義先進国です。
北インドと南インドの食事の違いも面白かったですね。小麦が主食の北インドと違って南インドはお米が主食。日本のように炊くだけではなく、米粉にして焼いたり膨らませたりして食べます。
炊くのではなく茹でて食べている姿を見てどんな味なんだろうと不思議になりました。
最後の方に出てきたインド料理を日本で実践している人たちも面白かったです。日本でインド料理を再現するための試行錯誤や、アドリブ過多の料理方法にこんな人たちもいるんだ……と思いました。料理していてとても楽しそうでした。
『くいしんぼうの南インド生活』しばざきとしえ・あーちゃん
海外で起業したいという夢とともにインドにやってきた著者。南インドは豊かな食文化にあふれていた。南インドで食べたいろいろな食事、スイーツや、インドで仕事をする上での苦労、インド人の優しさを描いたコミックエッセイ。
海外で仕事をする人はガッツがあって面白いです。どうやって商売を軌道に乗せたのかは、ビジネス面で興味深かったです。
登場するインドの人がみんな親切で、気持ちのいい雰囲気だったのがよかったです。距離感が近くて家族のようです。本当はみんながみんな善人じゃないかもしれませんが、優しい漫画で癒されました。
多民族・多宗教で、宗派によっても食のタブーが分かれるインドには多様な食べ物があります。菜食主義の人が多いので肉を使わないメニューも豊富です。
定番のカレーから、付け合わせ、飲み物、スイーツなど大量の食事が出てくるのが面白かったです。情報量が多いです。
そして著者(原案者)がノリノリでご飯を食べるのも元気そうでよかったです。明るい内容でした。
南アジア
『アジ玉。asia-no-tamanokosshi。』黒川あずさ
著者はバングラデシュの男性、クリリンと結婚する。しかし結婚してから、彼は地元の大富豪だということを知った。夫の実家に行ってその家の規模や周囲の権力にびっくりしたり、日本でもめたり。人望にあつい舅にあこがれたり……バングラデシュ夫との生活を描いたコミックエッセイ。
著者の夫、クリリン氏はバングラデシュではお金持ちの御曹司ですが、反面生活力がなく、日本ではいつもお金がありません。無職ではないですが、仕事が来なければやらないという体たらく。
著者はそんな彼にキレてあれこれ言いますが、多くの人にかしずかれ、湯水のように豪華な食事の出てくる家で育った彼が日本の庶民の生活を理解するのは難しいようです。
その一方で、「夫は妻に暴力を振るったりしない」だとか人間の善性を無邪気に信じているところもあり、何となく憎めない人でした。
夫の父は地元の名士で人望がとても篤いらしく、そこも面白かったです。
『旦那さんはイラン人』ダリヤ・ミイ
アジア人顔が好きだったはずなのに、イラン人と結婚することになった著者。その夫の家族は、宴会大好きで密な関係を築いていて陽気だった。日本人妻から見たイランの文化や家族関係、日本との価値観の違いを描いたコミックエッセイ。
まず面白いのはイランの人の家族観。何かと理由をつけては一族で集まり、ごちそうを作ってわいわいします。ひとつの集まりが終われば、また別の集まりへ……ときりがありません。
そして男尊女卑の社会ではありますが、女性に冷たいかというとそうでもありません。男性陣は結構女性に気づかいをします。
ただ、「女性に優しい」というのはあくまで身内の中だけの話で、家族とうまく行っていなかったり、いい縁がなかったりすると厳しいんだろうな、と同時に思いますね。実際に結婚して子どもが生まれないと離婚を促されたりもするようです。世知辛い。
よく言えばアットホームなんですが、悪く言えば家族中心主義で、ひとりで生きていくのは難しそうな社会です。
『ペルセポリス』マルジャン・サトラピ
イランに生まれた少女マルジことマルジャン。革命がおこったイランは、不穏な空気に包まれていた。日常的に人がいなくなり、投獄され、拷問され……。マルジの自由な性格に危険を感じた両親は、マルジを国外に出す。
マルジこと著者の人生は波乱万丈で、イランで戦争を経験し、逃げた先のオーストリアで薬物中毒になり、イランに戻って学生をし、パーティして逮捕される……と説明するにも情報が多いです。
苦労を繰り返しながらも、ただの不幸話に終わらないのは、著者が自分の欠点や失敗についてさらっと描いてしまっているからだと思います。
マルジは基本的には倫理観の強い子なんですが、ときどきこいつひどいな! ってシーンがあって、そこに生々しさを感じます。友達をリンチしようとしたり、知らない人に濡れ衣をかぶせたり。
もちろんやってはいけないことなんですが、それを正直に、淡々と描くことでむしろ好感を持てました。自分の欠点を冷静に見つめることのできる人なんですね。
東南アジア
『無敵のベトナム』まのとのま
『年収150万円一家森川さんちの身の丈海外旅行inベトナム』森川弘子
森川一家は、年収150万円で暮らしている。そんな中、森川家に旅行ギフト券10万円分が当たる。森川家は旅行先をベトナムに決めた。ベトナムでは、楽しいこともトラブルもあって……。
お金の話ばかりしているコミックエッセイでした。これはこれで面白いですが、ベトナムに行きたくなるかというと行きたくならないですね。
著者はベトナムの物価が安い頃を覚えているので、ベトナムの物価の値上がりにいちいちショックを受けます。
もちろんベトナムの物価は日本に比べれば圧倒的に安いのですが、高い支払いが発生するたびにイライラしてしまいます。
これ、日本人がベトナムに向かって思っている話ですが、観光地に暮らしている人間としてはベトナムの人間の立場もわかる気がするんですよね。
外国人観光客については来たらおもてなしするし、良い思い出を持って帰ってほしいですが、物価が安いから喜んでるのってこっちの努力を評価してないですよね。
著者もそれがわかってるから葛藤しているんだと思いますが。
『ミャンマーで尼になりました』天野和公
子どもの頃から宗教的なものにあこがれがあった著者は、結婚して寺嫁となる。そして、ミャンマーで尼になり修行をすることにした。ミャンマーの仏教文化や、尼同士のやりとり、そして宗教思想を語る本。
ミャンマーにやってきて自分の宗教観について考えたり、人と信仰について話し合ったり、真面目な本でした。
私は信心がない方ですが、こういう価値観を持っている人がいるんだなと思うと面白いです。
寺での生活も知らないことばかりで面白かったです。先輩の僧侶との関係や、修行中の独特の文化などが読めます。そうそう体験できないようなエピソードなので漫画にしてくれて助かります。
瞑想への思想は、精神医学でいうところのマインドフルネスと近いです。瞑想をマインドフルネスが真似をしているんですが。
しかしここまで集中して迷走するのは逆に大変そうです。マインドフルネスと言ってもほどほどがいいんでしょうね。
『おいしいマレー半島縦断』まえだなをこ
格安航空のチケットを手に入れた著者は、マレー半島のおいしいものを食べる旅に出る。現地に滞在する友人と出会いながら、その土地独自の料理を食べていく。そこには、マレー半島の文化があった。
ひたすら食べているだけのイラストエッセイです。気楽に読めるタイプの本。
私は東南アジアの食べ物がちょっと苦手なので「おいしそー!」とはならないんですが、いろいろな種類の食べ物が丁寧に描かれていて面白いです。
世の中には自分の知らない料理がいっぱいあるんだな、ということを教えてくれます。特に中華系の文化ともともとマレーシアに住んでた人々の文化が交じり合っているのが楽しいです。
ほとんど観光のシーンはなく、ひたすら、「食」について描かれているから看板に偽りなしです。タイトルに惹かれた人は読んで損はないと思います。
『バリ島に女ひとりで住んでみた』アマットル・キナ
バリ島の舞踏にあこがれてバリにやってきた著者。しかし踊るより絵を描いているほうが楽しいとわかり、絵を描きながらバリ島で暮らすようになった。インドネシア人のパートナーもできたが、ちょっと変な人で……。バリ島のおかしな日常をコミックエッセイで描く。
海外移住ってキラキラしてて楽しい! という話は一切なく、ただインドネシア、バリ島で庶民的な暮らしをしている話だけなのが笑ってしまいました。
排泄物などの下ネタが多いので好みは分かれると思います。私は好きですけど。
どんなトラブルが起こってもバリ島に暮らし続けている著者もメンタルがすごいです。
何だかんだ海外生活を楽しんでいそうなところがたくましいですね。
個人的に面白かったのはインドネシアのオカルトな集まりに行ったときのこと。
次々と人間がトランス状態になり「こんな簡単に神がかりになることあるのか……?」となりました。
信仰が深いとトランス状態も普通なのかもしれません。
『移住楽園 バグース・パラダイス』茶花ぽこ
インドネシアで漫画の教師をやっている著者は、インドネシアの人々との文化の違いに戸惑う。呪術や幽霊を強く信じていたり、いいかげんだったり……。一方で家族愛を重んじ、助け合う文化がある。笑いを交えながらも、インドネシアで働く大変さと楽しさを語る。
スピリチュアルなことを強く信じているインドネシアの人たちが面白かったです。ブラックマジック(人を害する黒魔術)を強く信じていて他人が自分を呪うのではないかと恐れています。日本にも呪術的なおまじないはありますが、ここまで強く信じている人は少ないんじゃないでしょうか。
インドネシアで漫画を教える話ゆえ、インドネシアの漫画事情が分かるのも面白かったです。インドネシアでも日本の漫画は大人気で、BLも有名らしいです。イスラーム圏なのにそれは大丈夫なのかとなりますが、まあ宗教が人間のすべてを決めるわけではないですからね。
でもどんな感じで流通しているのか気になります。
アジア周遊
『女一匹シルクロードの旅』織田博子
旅行好きの著者は、シルクロードへの旅を決意する。中国、中央アジアの国々、トルコまで、ユーラシア大陸を横断する旅程となった。旅先でトラブルがあったり、人の優しさに助けられたり。シルクロード沿いの国々の複数の文化が混交した風景もたっぷり楽しんだ。
イスラームとスラブの文化が入り交じる中央アジアの世界も楽しかったです。
明確な境界線はないものの、シルクロードを進むにつれて文化も人の姿も変わっていきます。
さまざまな民族が混血したせいか、複数の人種の身体的特徴を持つ人も少なくありません。
最近は民族同士の争いのニュースが多くて悲しいです。こういう民族と民族が入り混じると土地がその混ざり合う文化のまま、存続してほしいと思いました。
『バックパックシリーズ』グレゴリ青山
アジア諸国を旅する著者。中国や韓国、マレーシアやミャンマー、タイ、ベトナム、バリ島など。優しくもおかしい地元の人たちと触れ合ったり、トラブルに巻き込まれたり、他国の文化に触れたり。面白おかしい旅行コミックエッセイ。
『旅で会いましょう』『ふたたびの旅』「旅のうねうね」で一つのシリーズのようですが、一冊単位でも読めます。著者がアジア諸国を旅するコミックエッセイ。一部日本の話やロシアの話もあります。
相変わらずとほほな旅行を繰り返し、気楽に読める内容なのがいいですね。人の失敗ほど面白いものはないですからね。
面白かったのはベトナムのバッチャン村で陶芸体験をやっているくだりで、なかなかよさそうな陶芸ができないところに笑いました。先生の反応も面白いです。魯山人自称も好きすぎました。終盤まで天丼をやっているし。ベトナムに魯山人はいないんですよ。
陶器が全滅した(※実際にはしなかった)ときの著者の表情がめちゃくちゃよかったです。人ががっかりしている場面で面白がって申し訳ないですが本当に笑えました。
以上です。参考になれば幸いです。




























