ブックワームのひとりごと

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『平場の月』朝倉かすみ 感想 光文社文庫 たくさんの失敗をしてきた50代男女の恋が悲しい

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平場の月 (光文社文庫)

 

あらすじ・概要

50代男性の青砥は、須藤と再会する。小学校中学校が同じ学校であったふたりは、青砥が検査で病院に行ったことをきっかけに再会した。青砥と須藤は惹かれ合っていくが、一方で須藤のがんへの闘病でぎこちなくなる。訳あり男女の静かで愚かしい恋愛小説。

 

失敗してきたからこそ決断が染みる

訳あり50代男女の恋愛。それぞれ元は家庭があって、家庭を維持できなくなった事情があり、数多くの失敗をしてきました。そんなふたりが恋愛をするという話が独特でした。

女性側である須藤はがんの闘病をしており、ストーマという人工肛門で暮らしていくことになります。生存のためにストーマを選択したものの、排泄が上手くいかないこともあります。須藤の悲しさが伝わってきました。

終盤の青砥が行った愛の告白と、それを須藤がどう受け取ったかの描写はふたりの積年の感情が込められており複雑でした。自分なら喜んじゃうかもしれない、と思いつつ、須藤なりの矜持がそれを許さなかったのかもしれません。

たくさんの罪を犯してきた人間特有の言葉の重みがありました。

 

がんになって人に迷惑をかけながら生きることに罪悪感を覚える須藤は、未来の私自身を見るようでつらかったです。自分も限られた人間関係で暮らしているので自分のことを心配する一部の人にべったり助けてもらうと思うとやるせないです。

病気をしたときに都合よく自分のことを好きになってくれる人が現れる、何てことはそうないと思うのでそこは共感しないですけれどね。

 

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