ブックワームのひとりごと

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『トラウマ』宮地尚子 岩波新書 感想

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トラウマ (岩波新書)

 

DV、性加害、いじめやパワハラ、戦争や暴力など、強いストレスによって心身に異常をきたすトラウマ。トラウマを事前に防ぐには、また、トラウマを抱える人々に社会は何ができるのか? 様々な種類のトラウマを取り上げ、そこに宿る差別やジェンダーの問題を深掘りしていく。

 

トラウマの話から、人間はなぜ暴力を振るうのか……という話にもなり壮大な本でした。
トラウマを得てしまうと長期に渡って心の健康に不具合をきたします。自殺のリスクも高まり、トラウマによって家族や友人に迷惑をかけてしまうこともあります。
一方で、性加害・パワハラ・DVなど、加害者側も何らかのトラウマを持っていることは少なくないです。それを思うと人間の自由意志って何なんだろう? と思います。
また、日常のささやかな差別がトラウマの発生を助長することも語られています。
人間に完全な自由意志がないからこそ、社会のシステムの面で暴力や暴言を抑制するというアプローチも大事なのかも知れないと感じました。

気になる点があります。著者は創作や表現活動を美化しすぎです


もちろん私自身が創作活動に救われているのは否定しませんが、創作に救われる人もいれば救われない人もいます。
スポーツに救いを感じる人もいるし仕事に救いを感じる人もいます。その中で創作活動だけを特別扱いするのもひとつのバイアスであると感じます。
そしてつらい思いをしている人たちにも、テンプレみたいなハッピーエンドを書いたりベッタベタなトラウマとは無関係の創作をする人も少なくないです。つらい思いをしたからこそただ幸せなだけの作品を作る人も多いんですよね。
創作をやっている私からすると、「つらい思いをした人は特別な作品を作れるはず」というのが既に一種の決めつけに感じます。

 

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