ブックワームのひとりごと

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令和に『ぼくの地球を守って(全12巻)』を読み返す

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ぼくの地球を守って 1 (白泉社文庫)

 

あらすじ・概要

高校生の亜梨子(ありす)は隣の小学生輪(りん)につきまとわれている。輪はある日亜梨子の目の前でベランダから落下、九死に一生を得る。責任を感じる亜梨子に、輪は婚約してほしいと要求する。同じころ、亜梨子は同じ夢を共有するクラスメイトと出会う。彼らは前世の記憶を夢に見ているようなのだが……。

 

人間関係の泥沼がすごい

久しぶりに読み返したくなりました。何度読んでもめちゃくちゃ面白い少女漫画だと思います。

 

 

前世が宇宙人、というところまでは普通に思いつくアイデアだと思います。

しかし「地球を観測していた宇宙人たちが、戦争によって母星を失い、地球に降りるか揉めているところで疫病が発生、全滅する」という前世の物語がめちゃくちゃ面白いんですよね。

前世の登場人物は故郷を失った絶望と、疫病による死の恐怖にさらされ、彼らが追い詰められて起こした罪が現世の若者たちに影響していきます。

人間関係も昼ドラのように錯綜していますが、それぞれのキャラクターにどろどろした感情を抱くだけの理由が用意されています。悪趣味なだけでは終わらないように作られているのがいいです。

 

紫苑と木蓮の恋は共依存的で、やったらあかん恋愛という感じがひしひしとします。

同時に、ふたりにとってお互いが唯一孤独を癒してくれる存在だったのだろう、ということもわかります。

戦災孤児で人を信じることを知らず、反抗的な態度で周囲と接する紫苑と、キチェ・サージャリアンとしてサージャリムへの信仰の広告塔でありながら、サージャリムを信じることのできない異端の木蓮。

ふたりの心の歯車が絶妙なタイミングで噛み合ってしまった結果、こんな悲劇になってしまいました。

恋愛としてはよくない描写ばかりなんですが、それでもふたりを責められない心理描写の巧みさが光ります。

本題は紫苑と木蓮の悲恋なわけですが、腐れ縁である紫苑と玉蘭の関係もだいぶズブズブです。

善人で正義感が強い玉蘭ですが、鈍感で偽善的なところもあり、紫苑は玉蘭を強く嫌っています。その一方で、腐れ縁として完全に縁は切れず、何だかんだ彼のそばに身を置いてしまいます。

玉蘭も紫苑の戦災孤児としての身の上を哀れみ心配していますが、同時に紫苑の優秀さや他人を引き付ける能力にコンプレックスを抱いています。

総合すると紫苑の方がやってることは倫理にもとります。しかし玉蘭も「このタイミングでこれを言うか~!?」という無神経さの持ち主なので全面的には肯定できません。

人間関係の業を書くのがうまいです。

 

 

サージャリムという宗教があり、木蓮はキチェ・サージャリアン(キチェス)と呼ばれる特別な力を持っています。キチェスたちは神の使いとしてあがめられています。

作中では実際にスピリチュアルなことが起こるため、その宗教はある程度本物なのでしょう。

一方で、宗教に頼ってしまう人間の愚かしさも描かれます。木蓮はイケメンが好きで恋愛願望のある女性ですが、周囲の男性が木蓮を聖女のように扱ってしまうのでまともな恋愛をしたことがありませんでした。その原因をたどっていくと、キチェスを神格化し、政治的利用をする社会にも責任があります。

超能力者で、植物や動物と対話する力があれど、キチェスたちに世界を救うほどの力はありません。

崇拝され神格化される側の苦痛がひしひしと伝わってくる漫画でした。