ブックワームのひとりごと

読書中心に好きなものの話をするブログです。内容の転載はお断りします。

読書感想

「よい死」すなわち人間の尊厳なのか―安藤泰至『安楽死・尊厳死を語る前に知っておきたいこと』

あらすじ・概要 欧米を中心に認められつつある「安楽死・尊厳死」。日本でも安楽死の合法化を主張する人が増えている。しかし安楽死を認めることで、適切な医療を受けて生活することや、延命治療をすることそのものが「悪いこと」のように見なされないか。患…

浅ましく愚かな「反面教師」としてのギャンブル依存症―井川意高『熔ける 大王製紙前会長井川意高の懺悔録』

あらすじ・概要 製紙会社の三代目として生まれ、社長として大王製紙に君臨してきた井川意高。彼はカジノに狂い、子会社のお金に手を付けて何十億円も浪費してきた。著者自身が自分の生い立ち、社長時代のこと、お金を使わせるカジノの巧妙な罠を振り返る。東…

「感動」「泣ける」の視点から障害者の表象を問う―好井裕明『「感動ポルノ」と向き合う 障害者像にひそむ差別と排除』

あらすじ・概要 巷にあふれる障害者をめぐる「感動」ストーリー。しかしそれは当事者の思いや多様性を反映しているとは言えないのではないか。様々な作品を取り上げつつ、フィクションやドキュメンタリーの中の障害者の表象を考えていくブックレット。 排除…

最近読んだ漫画・本のまとめ(20230128)

記事を立てるほどではない作品の感想まとめです。 海空るり『うつ時々、躁:私自身を取り戻す』 りえぞう『キルギスに行ってみた 旅行記コミックエッセイ』 幌山あき『マーブルビターチョコレート』 『君の名は』 青沼貴子『ママは習い事がお好き』 近藤よう…

主人公が唐突に狂気的な行動をしてホラーすぎる―太田紫織『オークブリッジ邸の笑わない貴婦人 新人メイドと秘密の写真』

あらすじ・概要 家事が好きで家政婦の仕事をしていた鈴佳は、ユーリという男性にメイドとしてスカウトされる。その仕事はヴィクトリア時代の生活にあこがれる老婦人に当時のようなメイドとして仕えることだった。不便を感じつつ、アイリーンという名を得た鈴…

妹の死を乗り越え成長していく家族と、淡い恋の終わり―宮部みゆき『小暮写眞館Ⅳ 鉄路の春』

あらすじ・概要 花菱英一の父が家出した。その家出をきっかけに、英一は死んだ妹にまつわる父母と父方の親戚の確執を知ることになる。また、英一はオーバードーズや自殺未遂を起こした垣本順子の過去も知る。それぞれの思いに決着がつく中、英一もまた若者と…

HSPに関するよくある誤解を科学的知見から訂正し、エビデンスに基づいて語る―飯村周平『HSPの心理学 科学的根拠から理解する「繊細さ」と「生きづらさ」』

あらすじ・概要 昨今話題になっている人より敏感な体質「HSP」。しかし科学的な知見や研究を置き去りに、都合よく使われている言葉でもある。HSPについて研究している著者が一般的に流布しているデマを訂正し、科学的にHSPを知る方法は何か、今自分の敏感さ…

情報系同人誌を書く人にすすめたい「一般市民が調べる」方法―宮内泰介・上田昌文『実践 自分で調べる技術』

あらすじ・概要 「調べること」は学者や専門機関、記者の専売特許ではなく、一般市民も社会のことを調べることができる。図書館やインターネットの使い方、聞き取り調査やインタビューのこつ、調べたことをどう発表するかなど、市民の視点から調査を語ったハ…

少年はなぜ不格好なぬいぐるみをカモメだと言ったのか―宮部みゆき『小暮写眞館Ⅲ カモメの名前』

あらすじ・概要 フリースクールの子どもたちを写した写真にあった不格好な謎のぬいぐるみ。フリースクールの生徒のひとりは「それはカモメだ」と言い出した。英一は、その謎を解くために調べることになるのだが……。同時期に英一の家で泥棒騒動が起こり、英一…

縁側で泣く家族から読み解く、中心にはなれない人々の幸せ―宮部みゆき『小暮写眞館Ⅱ 世界の縁側』

あらすじ・概要 幽霊の写った写真の真相を明らかにしたことをきっかけに、新しく心霊写真にまつわる調査を依頼された英一。今度の写真は、縁側で泣く家族の写真。しかしその調査に関して当事者に話を聞くことは禁止される。いぶかしみながらも、英一は写真の…

トレパク騒動に傷ついたヒロインが優しい狐の青年に癒される―鳴澤うた『狐の婿入り~再会したあやかしの彼は大切なことを思い出させてくれました』

あらすじ・概要 いわれのないトレパク疑惑に巻き込まれ、誹謗中傷に疲弊してしまったイラストレーターの咲良。そんな中、祖母のけがで祖母の所有する山の見回りを頼まれる。そこで出会ったのはひとりの青年だった。どうやら彼の本性は狐で、咲良は彼とかつて…

調子のいい憶病な陽キャが怪異事件を解決する部署に配属させられる―成沢唱『狐格子~ためたね流御師 真坂野ゆり~』

あらすじ・概要 自分の失敗で異動させられることになった公務員、緒方太一は、「くらし文化特殊支援室」という謎の部署にやってきた。そこは警察では扱えない、怪異事件を解決する部署だった。主任分析官の真坂野ゆりとともに、太一は狐の面をかぶった謎の人…

人と見た目が変わってしまう病気にかかった人々の挫折、自己受容と前進―外山浩子『人は見た目!と言うけれど――私の顔で、自分らしく』

あらすじ・概要 アルビノ、脱毛症、小耳症……。人とは外見が違ってしまう病気にかかった人々。彼ら彼女らは、周囲の差別や偏見、また自分自身の葛藤に悩まされている。「見た目問題」を持つ当事者にインタビューし、著者がそれをまとめる。外見とは? 自分ら…

一枚の心霊写真から少年が謎を追う―宮部みゆき『小暮写眞館Ⅰ』

あらすじ・概要 閉店した写真館に引っ越してきた少年、花菱英一は、ひとりの女子高生が持ち込んできた写真と出会う。それはどこかおかしい心霊写真だった。その写真を持ち主に返そうと調べるうちに、英一は写真にこだわっていってしまう。写真の中に隠された…

能の話より認知症の母の国際的介護問題のほうが面白い―梅若マドレーヌ『レバノンから来た能楽師の妻』

あらすじ・概要 レバノン内戦ゆえに故郷を離れ、学生をしていた著者はあるとき能楽師の息子と出会う。彼と結婚することになった著者は、能楽における古いしきたりや価値観に戸惑いつつも夫を支える。夫は著者とともに、新しい能楽のスタイルを表現するため活…

違いを持った人々が意見を言い合うときそこに政治が生まれる―宇野重規『未来をはじめる:「人と一緒にいること」の政治学』

あらすじ・概要 政治学者、宇野重規はとある女子校で政治学の講義を行い、それを本にまとめることになった。友達同士であれ、国際的な舞台であれ、違った価値観の人の意見が衝突すれば、そこに政治が生まれる。社会における意思決定はどう行われるべきか、若…

中国語を話せない台湾人が、中途半端な自分を肯定できるようになるまで―温又柔『「国語」から旅立って』

あらすじ・概要 日本で育った台湾人である著者は、長じるにつれ「台湾人なのに中国語を話せない自分」に悩むようになる。高校で中国語を学び、大学でも引き続き中国語を選択するが、その過程でも違和感がなくならなかった。「自分は自分」として著者が自分を…

あのころのインターネットと小説家の虚実入り混じる日常―乙一『小生物語』

あらすじ・概要 インターネットのHPで日記を書き始めた作家、乙一。しかしその内容はどんどん虚実入り混じるようになる。映画を見たり漫画を読んだりする日々や、同業者との交流の中に唐突に挟まるファンタジー要素。フィクションのようなノンフィクションの…

限界集落で共同生活を送るニートたちはなぜそこに集ったのか―石井あらた『「山奥ニート」やってます』

あらすじ・概要 とある限界集落。そこで共同生活を送るニートたちがいる。家事をし、最低限の労働をする以外は、アニメを見たりゲームをして暮らしている。ニートたちのリーダー格である著者が、その生活の日々と、「山奥ニート」が発生した由来、社会への思…

ケルト時代から多文化移民社会までイギリス史をダイジェストで知る―近藤和彦『イギリス史10講』

あらすじ・概要 ユーラシア大陸の西の果て、島国として存在するイギリス。ブリテン島で暮らしていたケルト人の時代から、ノルマンコンクエストの時代、イングランド・スコットランドの確執、そして産業革命……。と、イギリスの歴史を10に分けダイジェストで…

1巻で何も解決していないけれど世界観とキャラはよかった―深山くのえ『王と后』

あらすじ・概要 七つの貴族家が支配する国。王に輿入れした天羽の娘淡雪は、天羽と他の貴族家との仲たがいによって后であるうちは幽閉される定めだった。淡雪はその運命を受け入れていたが、王である鳴矢が自分に一目ぼれをしたことを知って凪いでいた心が動…

最近読んだ・見た、本、漫画、動画のまとめ10つ(20221029)

記事を立てるほどではない感想のまとめです。 施川ユウキ『ヨルとネル』 人生ゲームって脱税じゃない??税の人を呼んで課税してもらおう【給料日が地獄】 なつきち『髄液が漏れる病気になったよ!脳脊髄液減少症闘病まんがエッセイ』 NHKスペシャル「玉鋼に…

「税金を払いたくない」という願望を巡る攻防と国際政治―志賀櫻『タックス・ヘイブン―逃げていく税金』

あらすじ・概要 個人や企業が金銭を儲けると、その一部を税金として納めなければならない。しかしその納税を回避し、社会に富を還元しない人たちがいる。その裏に存在するのはタックス・ヘイブンと呼ばれる租税回避が可能な地域。著者は税務署で働いた経験か…

最高裁の判決とそれを出した裁判官たちの裏事情―川名壮志『密着 最高裁のしごと―野暮で真摯な事件簿』

あらすじ・概要 三審制の最後の砦最高裁判所。そこではどのような判決が出ているのか、また、どのような裁判官が判決を出しているのか。最高裁のシステムやつくりを解説しつつ、「法の番人」の姿を暴き出す。

13歳で同性に恋した女の子が、自分がレズビアンだと受け入れるまで―室井舞花『恋の相手は女の子』

あらすじ・概要 13歳で同性である女性に初恋をした著者。女性が女性を好きになることはおかしいことなのだろうか? と悩み、葛藤する。しかし世界一周の船「ピースボート」に参加したことから、自分以外の性的マイノリティに出会う。自分を受け入れられな…

『第四次産業革命と教育の未来 ポストコロナ時代のICT教育』を読んで労働がしたくなくなった件

最近KindleUnlimitedに岩波書店の本が追加されているので、立て続けに読んでいます。どれも面白いのだけど、この本を読んで「そうか……教育の未来のためにがんばらなければ……」と思う前に「うわ~労働したくない!!!」という気持ちになってしまいました。 …

ヒロインが正義のシスターになって悪を滅する―喜多みどり『シスター・ブラックシープ 悪魔とロザリオ』

あらすじ・概要 赤ん坊のころから将来悪魔の花嫁となることを運命づけられたコンスタンティン(コンスタンス)は、男として育てられ教会の助祭として暮らしていた。しかしやはり悪魔は現れ、結婚指輪をつけられてしまう。その指輪を外すには、善行を積むしか…

海を漂うプラスチックが引き起こす問題と、これからできる対策―枝廣淳子『プラスチック汚染とは何か』

あらすじ・概要 細かく砕けたマイクロプラスチックが海を漂い、動物の体内に入って悪影響を与える……。しかし、海を漂うプラスチックの脅威はそれだけではなかった。プラスチックの成り立ちから、プラスチックが引き起こす諸問題、それを受けた各国の対策など…

「かわいそうな」加害者家族だけが助ける価値があるのではない―阿部恭子『加害者家族を支援する 支援の網の目からこぼれる人々』

あらすじ・概要 ある日突然家族が犯罪者になってしまったら――。加害者家族の支援活動をしてきた著者が、家族の犯罪に困惑し、傷つき、葛藤する彼らの姿を語る。排除され孤立する加害者家族のために社会は何ができるのか、そして、新たな犯罪を防ぐために支援…

東京に住むインテリ虫好き少年がアナウンサーになるまで―桝太一『理系アナ桝太一の生物部な日々』

あらすじ・概要 子どものころから虫好きだった著者、桝太一は、名門麻布中学に入学し、そこで生物部に入る。そこでは走り込みをして体を鍛えながら、生き物の採集をしていた。卒業後は東大に入り、海洋生物に興味を持ちアナゴや貝の研究をする。そんな著者は…