岩波新書はレーベル買いしてしまいますね。
書籍概要
16世紀ごろ、宗教改革のきっかけとなり、ルーテル教会の祖となったマルティン・ルター。彼の人生をたどりつつ、その思想に迫る。ルターが大きく変えた、ヨーロッパの宗教観とは……。
王様は裸だ、と言った人
童話にたとえると、ルターは「王様は裸だ」と言った人なのだなあと思います。
カトリック教会が「救済」をつかさどり、それを乱用するのが、ルターは許せませんでした。
彼は聖書に立ち返り、それを読み込むことによって、救済について深く思索を重ねていきます。
ルターは「九十五箇条の提題」を提出し、広く議論を呼びかけました。
教会に管理された救いにおいて、人間は罰からも自由になれると考えられるようになっていたのが、ルターの生きた時代であった。ルターが九十五箇条の提題で「愛のわざによって愛は成長し、人間はより良くなるが、贖宥によって人間はより良くならず、ただ罰から自由になるにすぎない」と指摘しているのは、この問題を突いているのである。
(ロケーション1697)
許される許されないではなく、「罰から自由になる」といういい方はいい得て妙だと思います。罪が許されることと、罰がないことは違うんですよね。
「教会と人間」の関係より、「神と人間」の関係に重きを置いて、民衆にとって救いとは何かを探っていくルターはかっこよかったです。
彼の功績をたたえる一方で、ナチス・ドイツによる著作の歪んだ利用など、闇の部分にも言及しているところに誠意を感じます。
著者はルーテル教会系の神学校を出ている方ですが、だからといって盲目にならず、言うべきことはきちんと言っておく姿勢は素晴らしいです。
まとめ
結構難しい内容の本でしたが、文章は巧みだったので頑張って読もうという気になりました。
「ルターが何をしたか」を知りたい人にはいい本だと思います。