ブックワームのひとりごと

読書中心に好きなものの話をするブログです。内容の転載はお断りします。

2022-11-01から1ヶ月間の記事一覧

無垢で倫理のないハカセと彼女に激重感情を持つ「君」のドタバタコメディ―時田『ハカセの机上な愛蔵』

あらすじ・概要 純真無垢だが一般常識がないハカセと、彼女の唯一の友人でありハカセの奇行にいつも巻き込まれている「君」。ハカセの作る発明品のせいで、ふたりは毎回トラブルに巻き込まれてしまう。近所の小学生、くおりあも加わって、ドタバタコメディは…

母親に虐待された男性が母親との関係に決着をつけるまで―歌川たいじ『母さんがどんなに僕を嫌いでも』

あらすじ・概要 不安定な家庭に育ち、母親から暴力と暴言を受けていた著者。長じて一流企業に入社するが、そこでかつての母親のようになっている自分に気づく。そんなとき、手を差し伸べてくれたのは友人たちだった。同性パートナーも得て自分の幸せを送って…

能の話より認知症の母の国際的介護問題のほうが面白い―梅若マドレーヌ『レバノンから来た能楽師の妻』

あらすじ・概要 レバノン内戦ゆえに故郷を離れ、学生をしていた著者はあるとき能楽師の息子と出会う。彼と結婚することになった著者は、能楽における古いしきたりや価値観に戸惑いつつも夫を支える。夫は著者とともに、新しい能楽のスタイルを表現するため活…

違いを持った人々が意見を言い合うときそこに政治が生まれる―宇野重規『未来をはじめる:「人と一緒にいること」の政治学』

あらすじ・概要 政治学者、宇野重規はとある女子校で政治学の講義を行い、それを本にまとめることになった。友達同士であれ、国際的な舞台であれ、違った価値観の人の意見が衝突すれば、そこに政治が生まれる。社会における意思決定はどう行われるべきか、若…

太りやすい体質で自己肯定感をすり減らした著者がたどり着いたダイエットの到達点―歌川たいじ『「おつきあい」の壁を乗り越え48キロやせました』

あらすじ・概要 子どものころから太っていた著者。大人になっても太りやすい体質で、やせては太りを繰り返していた。太っている外見をいじられ、余計なアドバイスをされる日々を過ごしていた。一念発起して食生活を見直し、ダイエットに成功した著者。しかし…

漫画家志望がじったんばったんあがきながらクオリティ向上を目指す―あやめゴン太『どうせ死ぬなら描いて死ぬ』

あらすじ・概要 怠け気味の漫画家志望であった著者は、脳梗塞で死にかけたことから自分の怠けぐせを反省、もう一度漫画家としてきちんとやり直そうとする。仕事をしながら漫画を描くコツや、プロットの立て方、ネームの作り方など、著者の試行錯誤と工夫の過…

物理的には男が救われ、精神的にはヒロインが救われる、震災後を捉え直す作品―『すずめの戸締まり』

あらすじ・概要 高校生のすずめは、ある日不思議な男性・草太に出会う、彼が不思議な扉を閉めるのを目撃したすずめは、彼が「閉じ師」として各地の地震を防いでいることを知る。しかし草太は謎の猫にいすの姿に変えられてしまい、すずめも彼を追って猫探しの…

自己肯定感が下がったときに読みたいコミックエッセイおすすめ7選

ここ最近「自己肯定感」についてSNSで見ることが多いので、「自己肯定感の回復」や「自己肯定感とは何か」ということをテーマにしているコミックエッセイを過去記事から集めてみました。 太っていた女性がぽっちゃり向けファッション誌に出会い自尊心を取り…

とある漁港で暮らす小学生が自分のルーツを知る―『漁港の肉子ちゃん』(アニメ映画版)

あらすじ・概要 とある漁港の古い船に母親と一緒に暮らしている喜久子。その母、肉子はちょっとお馬鹿で太っていて、でも明るい性格の女性だ。周囲より少し大人びている喜久子は小学校に通い、クラスメイトと交流しつつ、自分の存在に思い悩むようになる。友…

チート超能力者が自分の能力を隠しながら平穏な日常を守る―『斉木楠雄のΨ難』(アニメ版)

あらすじ・概要 テレパシー、念動力、瞬間移動など、多種多様な超能力を持って生れついた斉木楠雄。しかし彼の両親は細かいことを気にしない性格のため、普通の少年として育った。斉木は静かで平穏な日常を守るため、周囲にばれないように超能力を使いながら…

ちょっと変わった少年少女が生み出す出会いの面白さ―和山やま『夢中さ、きみに。』

あらすじ・概要 とある学校に通う、ちょっと変わった少年少女。美術部の男子、本好きの女子、根暗で陰気なはみ出し者など、ある日突然彼らの日々は交差し、不思議な縁が生まれる。さまざまな関係性を描いた連作短編集。

中国語を話せない台湾人が、中途半端な自分を肯定できるようになるまで―温又柔『「国語」から旅立って』

あらすじ・概要 日本で育った台湾人である著者は、長じるにつれ「台湾人なのに中国語を話せない自分」に悩むようになる。高校で中国語を学び、大学でも引き続き中国語を選択するが、その過程でも違和感がなくならなかった。「自分は自分」として著者が自分を…

あのころのインターネットと小説家の虚実入り混じる日常―乙一『小生物語』

あらすじ・概要 インターネットのHPで日記を書き始めた作家、乙一。しかしその内容はどんどん虚実入り混じるようになる。映画を見たり漫画を読んだりする日々や、同業者との交流の中に唐突に挟まるファンタジー要素。フィクションのようなノンフィクションの…

限界集落で共同生活を送るニートたちはなぜそこに集ったのか―石井あらた『「山奥ニート」やってます』

あらすじ・概要 とある限界集落。そこで共同生活を送るニートたちがいる。家事をし、最低限の労働をする以外は、アニメを見たりゲームをして暮らしている。ニートたちのリーダー格である著者が、その生活の日々と、「山奥ニート」が発生した由来、社会への思…

2015年以降に発行されたおすすめファンタジーラノべ・ライト文芸13選

ファンタジーラノベの話題になると「〇〇みたいな古すぎる作品を勧めるな」みたいな話になるので、逆にこれは古すぎないかな、という作品をまとめてみました。 2015年なのはきりがいいからですが、5年に一回くらいこういう記事を書いてもいいかもしれないで…

ケルト時代から多文化移民社会までイギリス史をダイジェストで知る―近藤和彦『イギリス史10講』

あらすじ・概要 ユーラシア大陸の西の果て、島国として存在するイギリス。ブリテン島で暮らしていたケルト人の時代から、ノルマンコンクエストの時代、イングランド・スコットランドの確執、そして産業革命……。と、イギリスの歴史を10に分けダイジェストで…

突然父親になった中年男性の戸惑いと適応―渡辺電機(株)『父娘ぐらし 55歳マンガ家が8歳の娘の父親になる話』

あらすじ・概要 50歳を過ぎてひとり身で、このまま家族を持たず暮らしていくのだと思っていた著者。しかし二児を持つシングルマザーと結婚することになり、この年にして突然の子持ちに。さらに家庭の事情で8歳の娘とふたり暮らしをすることに。著者は戸惑い…

「自分のため」だけで生きていけないし、「他人のため」だけでも生きていけない―『MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』

www.youtube.com あらすじ・概要 多忙な広告会社に勤める吉川は、同僚から「ここ一週間をタイムループしている」と告げられる。半信半疑だったが、数々の証拠を見せつけられて信じることに。タイムループを乗り越えるには、どうやら部長がカギになっているら…

1巻で何も解決していないけれど世界観とキャラはよかった―深山くのえ『王と后』

あらすじ・概要 七つの貴族家が支配する国。王に輿入れした天羽の娘淡雪は、天羽と他の貴族家との仲たがいによって后であるうちは幽閉される定めだった。淡雪はその運命を受け入れていたが、王である鳴矢が自分に一目ぼれをしたことを知って凪いでいた心が動…

身内を立て続けに亡くした著者が自分の父親の人生を振り返る―時田『身内の死比較漫画』

あらすじ・概要 著者の元に届いた父の訃報。末期がんに侵されていた父は、DV気質ゆえに著者の母と離婚し、今は孤独な人生を送っていた。良い思い出のない父親の葬儀に参加し、何だかんだ彼を弔った著者だったが、しばらくして今度は祖父が危篤状態に。短期間…

恋愛や家族に夢を持てない女性が母親になる―ヤマダカナン『母になるのがおそろしい』

あらすじ・概要 結婚し、子どもを考える年頃になってきた著者。夫は子どもを持ちたいというものの、著者にはトラウマがあった。それは恋愛依存の母親に育てられたこと。ろくでもない男をとっかえひっかえする母親の影響で、著者は恋愛に夢を見られなくなって…

不安障害になってしまった女性の闘病から完解まで―キム・イェジ『私、幸いなことに死にませんでした』

あらすじ・概要 人前で話すことにひどく緊張する、人付き合いが苦しい。病院に行くと不安障害と診断されたが、治療はうまくいかない。ときに自殺を考えた著者だったが、死にきれず治療を続けることを決意する。二度のカウンセリング、何度も挫折した薬物治療…

冤罪をかけられようとする青年と、警察官の有色人種同士の即席バディ―シマ・シンヤ『ロスト・ラッド・ロンドン』

あらすじ・概要 ロンドンの市長が地下鉄で殺害された。大学生のアルは、同じ電車に乗っていたこと、ポケットに血まみれのナイフが入っていることから容疑者として浮上してしまう。「彼は犯人ではない」と考えた警察官のエリスは、彼を冤罪からかばい真犯人を…