ブックワームのひとりごと

読書中心に好きなものの話をするブログです。内容の転載はお断りします。

2022-01-01から1年間の記事一覧

育ちのいい老女と売れないお笑い芸人の、年の差と性別を超えた友情―矢部太郎『大家さんと僕』

あらすじ・概要 一軒家の2階を間借りすることになった著者。1階には、大家として年老いた女性が暮らしていた。何かと「大家さん」に話しかけられ、世話を焼かれるにつれて著者と大家さんは仲良くなる。大家さんと街に出て食事に行ったり、力仕事の手伝いを…

縁側で泣く家族から読み解く、中心にはなれない人々の幸せ―宮部みゆき『小暮写眞館Ⅱ 世界の縁側』

あらすじ・概要 幽霊の写った写真の真相を明らかにしたことをきっかけに、新しく心霊写真にまつわる調査を依頼された英一。今度の写真は、縁側で泣く家族の写真。しかしその調査に関して当事者に話を聞くことは禁止される。いぶかしみながらも、英一は写真の…

2022年下半期に映画館で見た映画まとめ10本

もう2022年も終わりなので、下半期に映画館で見た映画の感想をまとめました。 会社の福利厚生が変わって「申請すれば800円で映画が見られるクーポンがもらえる」制度になったのでじゃんじゃん申請していました。ありがたい。その代わりクーポンが使える大き…

漫画家とその夫が田舎で暮らした4年間―グレゴリ青山『田舎暮らしはじめました うちの家賃は5千円』

あらすじ・概要 東京の高すぎる家賃に嫌気がさし、和歌山の奥地の家賃5000円の家に引っ越したグレゴリ青山とその夫。家庭菜園を作ったり、四季の花を満喫したりしながらも、不便さや虫の被害など田舎特有の困りごとにも悩まされる。いいことも悪いこともあっ…

虐げられた少女の一発逆転と、本当の高貴さとは何かというメッセージ―『コンフィデンスマンJP プリンセス編』

あらすじ・概要 世界有数の大富豪レイモンド・フウが亡くなり、その遺産は行方の分からない末の子ミシェルが相続することになった。詐欺師のダー子はスリの片棒を担がせられていた少女、コックリをミシェルに仕立て上げ、レイモンドの子どもたちから手切れ金…

トレパク騒動に傷ついたヒロインが優しい狐の青年に癒される―鳴澤うた『狐の婿入り~再会したあやかしの彼は大切なことを思い出させてくれました』

あらすじ・概要 いわれのないトレパク疑惑に巻き込まれ、誹謗中傷に疲弊してしまったイラストレーターの咲良。そんな中、祖母のけがで祖母の所有する山の見回りを頼まれる。そこで出会ったのはひとりの青年だった。どうやら彼の本性は狐で、咲良は彼とかつて…

50代になって外で働きたい!と思った主婦イラストレーターの奮闘―高橋陽子『50代からのお仕事探しアタフタ日記』

あらすじ・概要 主婦、イラストレーターとして活動してきた著者は、52歳になって子育てにもひと段落し、外で働きたいと思うようになる。しかし長く職に就いていなかった著者は職歴に書くことがなく、52歳という年齢の壁もあって面接に苦戦する。年をとっても…

調子のいい憶病な陽キャが怪異事件を解決する部署に配属させられる―成沢唱『狐格子~ためたね流御師 真坂野ゆり~』

あらすじ・概要 自分の失敗で異動させられることになった公務員、緒方太一は、「くらし文化特殊支援室」という謎の部署にやってきた。そこは警察では扱えない、怪異事件を解決する部署だった。主任分析官の真坂野ゆりとともに、太一は狐の面をかぶった謎の人…

【コンパクトに読める学びの世界】岩波新書のおすすめ本10選

最近量は少ないもののKindleUnlimitedに岩波新書が来ているのでコツコツ読んでいるのですが、やはり岩波新書の「当たり」率はすごいですね。読んでよかったと思える本が多いです。 今日は過去記事から岩波新書の本で面白かったものをまとめてみました。 ケル…

JKと真面目書記が恋して起こる、終わらない青春の終わり―時田『JKども、荒野をゆけ』

あらすじ・概要 生徒会に逆らった書記の少年は、学園艦から死刑星に落とされる。しかしそこは男子向けの死刑星ではなく女子向けの死刑星であり、いたのは不思議な言葉を話すJKたちだった。少年は、戸惑いながらもJKたちと荒れ果てた荒野で一緒にサバイバルを…

いろんな地域のマラソン大会に参加して大阪マラソンへ―たかぎなおこ『まんぷくローカルマラソン旅』

あらすじ・概要 趣味としてのマラソンが軌道に乗ってきた著者は、各地域で開催されているマラソン大会に参加するようになる。そこで大阪マラソンの抽選に当選。タイムを縮めるためダイエットを志す。

人と見た目が変わってしまう病気にかかった人々の挫折、自己受容と前進―外山浩子『人は見た目!と言うけれど――私の顔で、自分らしく』

あらすじ・概要 アルビノ、脱毛症、小耳症……。人とは外見が違ってしまう病気にかかった人々。彼ら彼女らは、周囲の差別や偏見、また自分自身の葛藤に悩まされている。「見た目問題」を持つ当事者にインタビューし、著者がそれをまとめる。外見とは? 自分ら…

脳梗塞になった実体験を漫画家志望がコミカルに語る―あやめゴン太『33歳漫画家志望が脳梗塞になった話』

あらすじ・概要 ある日、仕事に行くときに左半身に違和感を覚えた著者。そのまま出勤してしまうが、すぐ病院に行き、そこで脳梗塞と診断される。一刻を争う状態と言われ即入院、治療とリハビリを開始することとなる。脳梗塞になった人だからこそ描ける、闘病…

統合失調症になった猫画家が妻の願いとともに苦しみの中を歩む―『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』

あらすじ・概要 画家として、亡くなった父に代わり妹たちを養うルイス・ウェイン。妹たちの家庭教師、エミリーと恋に落ちた彼は、身分違いの結婚をしてしばらく幸せに暮らす。しかしエミリーが末期の乳がんだとわかる。妻を看取ったあと、ルイスは猫を描く画…

一枚の心霊写真から少年が謎を追う―宮部みゆき『小暮写眞館Ⅰ』

あらすじ・概要 閉店した写真館に引っ越してきた少年、花菱英一は、ひとりの女子高生が持ち込んできた写真と出会う。それはどこかおかしい心霊写真だった。その写真を持ち主に返そうと調べるうちに、英一は写真にこだわっていってしまう。写真の中に隠された…

京都の亀岡で都会に近い田舎を満喫する―グレゴリ青山『京都「トカイナカ」暮らし』

あらすじ・概要 和歌山の田舎から京都の亀岡に引っ越してきた著者。自然豊かで、京都駅へのアクセスもいいその土地で、著者は充実した生活を送っている。京都市内のお出かけスポットから、亀岡の豊かな自然の魅力、二ホンミツバチの養蜂にチャレンジした記録…

無垢で倫理のないハカセと彼女に激重感情を持つ「君」のドタバタコメディ―時田『ハカセの机上な愛蔵』

あらすじ・概要 純真無垢だが一般常識がないハカセと、彼女の唯一の友人でありハカセの奇行にいつも巻き込まれている「君」。ハカセの作る発明品のせいで、ふたりは毎回トラブルに巻き込まれてしまう。近所の小学生、くおりあも加わって、ドタバタコメディは…

母親に虐待された男性が母親との関係に決着をつけるまで―歌川たいじ『母さんがどんなに僕を嫌いでも』

あらすじ・概要 不安定な家庭に育ち、母親から暴力と暴言を受けていた著者。長じて一流企業に入社するが、そこでかつての母親のようになっている自分に気づく。そんなとき、手を差し伸べてくれたのは友人たちだった。同性パートナーも得て自分の幸せを送って…

能の話より認知症の母の国際的介護問題のほうが面白い―梅若マドレーヌ『レバノンから来た能楽師の妻』

あらすじ・概要 レバノン内戦ゆえに故郷を離れ、学生をしていた著者はあるとき能楽師の息子と出会う。彼と結婚することになった著者は、能楽における古いしきたりや価値観に戸惑いつつも夫を支える。夫は著者とともに、新しい能楽のスタイルを表現するため活…

違いを持った人々が意見を言い合うときそこに政治が生まれる―宇野重規『未来をはじめる:「人と一緒にいること」の政治学』

あらすじ・概要 政治学者、宇野重規はとある女子校で政治学の講義を行い、それを本にまとめることになった。友達同士であれ、国際的な舞台であれ、違った価値観の人の意見が衝突すれば、そこに政治が生まれる。社会における意思決定はどう行われるべきか、若…

太りやすい体質で自己肯定感をすり減らした著者がたどり着いたダイエットの到達点―歌川たいじ『「おつきあい」の壁を乗り越え48キロやせました』

あらすじ・概要 子どものころから太っていた著者。大人になっても太りやすい体質で、やせては太りを繰り返していた。太っている外見をいじられ、余計なアドバイスをされる日々を過ごしていた。一念発起して食生活を見直し、ダイエットに成功した著者。しかし…

漫画家志望がじったんばったんあがきながらクオリティ向上を目指す―あやめゴン太『どうせ死ぬなら描いて死ぬ』

あらすじ・概要 怠け気味の漫画家志望であった著者は、脳梗塞で死にかけたことから自分の怠けぐせを反省、もう一度漫画家としてきちんとやり直そうとする。仕事をしながら漫画を描くコツや、プロットの立て方、ネームの作り方など、著者の試行錯誤と工夫の過…

物理的には男が救われ、精神的にはヒロインが救われる、震災後を捉え直す作品―『すずめの戸締まり』

あらすじ・概要 高校生のすずめは、ある日不思議な男性・草太に出会う、彼が不思議な扉を閉めるのを目撃したすずめは、彼が「閉じ師」として各地の地震を防いでいることを知る。しかし草太は謎の猫にいすの姿に変えられてしまい、すずめも彼を追って猫探しの…

自己肯定感が下がったときに読みたいコミックエッセイおすすめ7選

ここ最近「自己肯定感」についてSNSで見ることが多いので、「自己肯定感の回復」や「自己肯定感とは何か」ということをテーマにしているコミックエッセイを過去記事から集めてみました。 太っていた女性がぽっちゃり向けファッション誌に出会い自尊心を取り…

とある漁港で暮らす小学生が自分のルーツを知る―『漁港の肉子ちゃん』(アニメ映画版)

あらすじ・概要 とある漁港の古い船に母親と一緒に暮らしている喜久子。その母、肉子はちょっとお馬鹿で太っていて、でも明るい性格の女性だ。周囲より少し大人びている喜久子は小学校に通い、クラスメイトと交流しつつ、自分の存在に思い悩むようになる。友…

チート超能力者が自分の能力を隠しながら平穏な日常を守る―『斉木楠雄のΨ難』(アニメ版)

あらすじ・概要 テレパシー、念動力、瞬間移動など、多種多様な超能力を持って生れついた斉木楠雄。しかし彼の両親は細かいことを気にしない性格のため、普通の少年として育った。斉木は静かで平穏な日常を守るため、周囲にばれないように超能力を使いながら…

ちょっと変わった少年少女が生み出す出会いの面白さ―和山やま『夢中さ、きみに。』

あらすじ・概要 とある学校に通う、ちょっと変わった少年少女。美術部の男子、本好きの女子、根暗で陰気なはみ出し者など、ある日突然彼らの日々は交差し、不思議な縁が生まれる。さまざまな関係性を描いた連作短編集。

中国語を話せない台湾人が、中途半端な自分を肯定できるようになるまで―温又柔『「国語」から旅立って』

あらすじ・概要 日本で育った台湾人である著者は、長じるにつれ「台湾人なのに中国語を話せない自分」に悩むようになる。高校で中国語を学び、大学でも引き続き中国語を選択するが、その過程でも違和感がなくならなかった。「自分は自分」として著者が自分を…

あのころのインターネットと小説家の虚実入り混じる日常―乙一『小生物語』

あらすじ・概要 インターネットのHPで日記を書き始めた作家、乙一。しかしその内容はどんどん虚実入り混じるようになる。映画を見たり漫画を読んだりする日々や、同業者との交流の中に唐突に挟まるファンタジー要素。フィクションのようなノンフィクションの…

限界集落で共同生活を送るニートたちはなぜそこに集ったのか―石井あらた『「山奥ニート」やってます』

あらすじ・概要 とある限界集落。そこで共同生活を送るニートたちがいる。家事をし、最低限の労働をする以外は、アニメを見たりゲームをして暮らしている。ニートたちのリーダー格である著者が、その生活の日々と、「山奥ニート」が発生した由来、社会への思…