ブックワームのひとりごと

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滅びゆく人類の中に生まれたつぎはぎの怪物 日日日『ビスケット・フランケンシュタイン 完全版』感想

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ビスケット・フランケンシュタイン〈完全版〉 (講談社BOX)

好きだった本を読み返すシリーズ。でも完全版は読んだことがありませんでした。

 

あらすじ

体の一部が謎の物質に置き換わる奇病が蔓延する世界。患部をつぎはぎにした人形は、自我に目覚めた。ビスケという名を得た怪物は、徐々に荒廃していく世界をさまよう。生まれてきた目的を求めて――。

 

生きる目的を求める怪物

タイトル通り、メアリ・シェリーの『フランケンシュタイン』がオマージュ元になっています。

創造主に愛されず、世界をさまようところ、「なぜ生まれてきたのか」を思い悩むところ、そして「人間性」を獲得するところは、もともとの『フランケンシュタイン』を踏襲していて面白かったです。

ストーリーとしては別物なんですが、『フランケンシュタイン』を読み込んで作ってくれたのだなとわかるようになっています。

フランケンシュタイン』がとても好きな人間としては、そこがとても嬉しかったです。

 

人類滅亡に進む世界

終末SF要素も、混沌とした雰囲気に合っていてよかったです。

設定が結構いいかげんなところもあるけれど、逆にそこも、「つぎはぎの怪物」というテーマに沿っている気がします。

つぎはぎの物語を生きるつぎはぎの怪物、という解釈で読むと味わいがあります。

完全版に追加された「つめあと神経質」はとてもSFっぽくてよかったです。幻想的で、空想的、それでもどこか悲しかったです。

描かれた世界の真実が書かれたとき、思わず膝を打ちたくなりました。

荒唐無稽な物語の中に、ゆるぎない優しさがあって私は好きです。

 

まとめ

やっぱりふたたび読んでも面白かったです。日日日の小説では一番好きです。

いつ読んでも、ビスケはきれいでかっこいいですね。

 

ビスケット・フランケンシュタイン〈完全版〉 (講談社BOX)

ビスケット・フランケンシュタイン〈完全版〉 (講談社BOX)