ブックワームのひとりごと

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大人たちから見放された普通の少女の末路―ヤマシタトモコ『ひばりの朝』

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ひばりの朝 (1) (FEEL COMICS)

今日の更新は、ヤマシタトモコ『ひばりの朝』1、2巻のまとめての感想です。

 

あらすじ・書籍概要

蠱惑的で、臆病で、人目を引く少女、日波里(ひばり)。周りの大人たちは、彼女に対して劣情や憎悪を持つ。しかし、彼女は実は、父親から性的ないたずらをされているらしい……。

 

読み終わって「こんなやるせない話があっていいのか」と言いそうになりました。でもありそうなのが困ってしまいます。

 

父親から性的虐待の危険にさらされているひばり。

ひばりはちょっと見た目がかわいくて色っぽいだけで、「普通の女の子」です。でも周りの大人たちは、「きみは普通だよ」と言ってあげることができません。自分のことで忙しく、保身にまみれていて、ひばりのことまで気が回らない。

そういう大人たちの責任逃れがひばりを苦しめているんですね。

 

大人たちは児童相談所に通報すればよかったし、せめて逃げ場所になってあげればよかった。でも自分の立場になって、それができるか? と思うとやっぱりためらってしまうところがあるでしょうね。私だって「普通の暮らし」に固執してしまうところはあるし、周りの人も普通に暮らしてる、と思い込みたいと思ってしまいます。

 

みんな、助けられるかもしれない相手から目を背けて、自分自身のつまらない苦しみに惑わされています。その結果、ひばりが迎えた結末は本当につらいものでした。

大人のずるさ、弱さをド直球に描かれてしまって、それが私自身を見抜かれているようで本当につらいです。後味が悪いけれど、これは自己嫌悪なんでしょうね。

 

まとめ

自分を振り返って自己嫌悪に陥ってしまう話なんですが、それでも読んでよかったです。たまには物語に殴られたほうがいい。

おすすめしにくい作品ですが私は好きです。

 

ひばりの朝 (1) (FEEL COMICS)

ひばりの朝 (1) (FEEL COMICS)

 
ひばりの朝 (2) (FEEL COMICS)

ひばりの朝 (2) (FEEL COMICS)