雌雄同体のなめくじの神様と男にも女にもなりたくない人間という、ひとつのカップルで3Lをこなしてしまう漫画が完結しました。
今回はその総評と、アカデとは何者だったのかを自分なりに考察してみたいと思います。
あらすじ・書籍概要
一族の女に伝わる早死にの呪いによって、男として育てられた少女葬太郎。彼女(彼?)はなめくじの神にさらわれ、結婚相手とされてしまう。居場所がないと思っていた葬太郎は、それを受け入れ夫婦になるが……。
どこまでもあやふやになっていくラブラブ恋愛漫画
だいたい物語の結末はいろいろなことがはっきりして決着がつくものなんですが、この漫画は最後になればなるほどあやふやにガバガバになっていく話でした。男と女、人と人でないもの、夫と妻、夢と現。でもその「境界線? なくていいんじゃない?」という方向性がどこまでも潔かったです。
最終的に銀書姫と葬太郎は自我までまぜこぜにしてしまった感じがします。
『ばけむこ』を読んでいると、あれこれ定義をしたがる自分自身のほうが間違っている気がしてきます。世界って言うのはゆらゆら動いて不確かなんだ……。
物語の最初で「夫」となることを望んだ葬太郎が、最後に「妻」になろうとするのが象徴的でした。本来の性別に戻るのとは違う、男でもあり女でもあることを受け入れたという事実がうれしかったです。
銀書姫自身も、変容していく葬太郎をたやすく受け入れ、肯定していきます。そして葬太郎もなめくじ意外にいろいろなものが混じっている銀書姫を愛する。ラブラブか! こいつら!
いろいろ意味深なことが描かれているけれど基本はイチャイチャバカップルの話です。
最後にアカデが何者だったのかという話。
ギリシャ神話で最初に生まれた神はエロース、つまり「愛」の神だという説があるんですけれど、アカデはそういうものだったのかもしれません。
ふたつのものをつなぎ、新しい何かを生み出す「愛」の神。葬太郎の呪いとは、自分の中の愛をうまく受け入れられなかったことなのではないでしょうか。だからこそ、銀書姫と交わるたびにアカデの怖さはなくなっていきます。
そうだとすれば恋愛少女つくばねがアカデを肯定的に見ているのもうなずけますね。
葬太郎が自分の血脈をさかのぼり、「生まれてくる前」の場所にアカデがいたのは、アカデこそが葬太郎を作ったからかな。
というのが私の考察なんですけど、合っているかわからん! 他に考察がある方はぜひブログを書いてみてほしい。
まとめ
三巻と短い作品でしたが盛りだくさんで楽しかったです。「境界なんてなくてもいい」というのがメッセージなら、これは大団円だと言えるオチではないでしょうか。
どこまでも交わり合う自我が見たい人はぜひ読んでみてください。