あらすじ
事故で足が不自由になった恵美。彼女は事故にかかわったクラスメイトを責めたことをきっかけに、クラスで孤立してしまう。恵美は同じくクラスで浮いている、由香と仲良くなるが……。ひとりの少女を中心とした連作短編集。
欠点のある子どもたちが頑張る
この作品に登場する子どもたちは、みんなどこか欠点を抱えています。その欠点が生々しく、「ああ自分もこんな失敗をしてしまった」とつらくなる部分があります。
それでも最後には、きちんと彼らなりの希望を見出して、一歩ずつ歩いていくのが嬉しかったです。つらくて悲しいけれど、勇気を与えられる小説でした。
八方美人な子も、落ちこぼれ気味な子も、それを否定せず、彼らの何気ない、しかし確かな輝きを切り取っていくのがよかったです。
エピローグまで読むと、彼らの物語は平坦なものではなかったのだろうと察せられます。けれどそれでも、彼らの苦しみや悲しみは無駄なものではなかったと思いたいです。
シンプルで読みやすい
もうひとつよかったのが、作品の文章がシンプルで読みやすいことです。1時間ちょっとで読み切りました。
文章に気取ったところがなく、自然なのに、胸を打つ内容でした。本当にプロの文章って感じがします。
それでいて、話はとても濃厚なので、なんだか得した気分になりました。
話自体は結構しんどいのですが、子どもにも読める内容だと思います。変に教訓的だったり、大人が説教を始めたりしないので、おすすめしやすい本ですね。
子どもたちにはこの本を読んで、少し救われてほしいです。
まとめ
すごく面白かったです。今まで読んだ重松清の本で一番好きかもしれません。
心がつらいので気軽に読み始められないのだけれど、また機会があったら著者の本を読みたいです。
同著者の本だと『見張り塔からずっと』も好きです。こっちは大人が主人公だけれども。