今日の更新は、永田洋子『十六の墓標(上)―炎と死の青春』です。
親からの借り物。
あらすじ・書籍概要
山岳ベースでリンチ殺人事件を起こした死刑囚、永田洋子。彼女が生い立ちと活動家としての人生を回想する。左翼活動にかけた生活は、徐々に先鋭化し後戻りができなくなっていく。そして、彼女は山岳ベースにたどりついた。
政治活動をするときは「私」を手放してはならない
まず感じたのは著者含め、革命活動を行う人たちの主体性のなさです。
着地点を失った議論、しょうもないことで批判しあう関係、恋愛ですら思想抜きで考えられないグダグダ感。
みんな「公私」の「私」を失ってしまっているんですよね。しっかりした「私が個人として何をしたいか」がないから、迷走に迷走を重ねて、そのことにすら気づかないんです。
読んでいるとちょくちょく活動から身を引く人たちが出てくるのですが、そういう人たちは「私」を取り戻したのだろうと思いました。
私は政治活動をすることは大事なことだと思っています。でも、平和に暮らしたいとか、ごはんを食べたいとか、かわいい人と恋愛したいとか、そういう個人的な欲求も手放してはいけないのではないでしょうか。そうでないと思想に飲まれてしまいます。
同時に当時の社会の閉塞感はすごく感じました。性差別とか、理不尽な慣習とか。
擁護するわけではないですが、親世代に抑圧されてきた鬱屈がすごくあるんだろうなと思いました。
とはいえ左翼活動をしても女性が炊事をやっているし、強姦事件や痴漢事件が起こっているし、本当にもう安住の地がないですね。
彼女がやったことは許されることではないですが、彼らの失敗から学ぶべきことは多いです。
犯罪者の手記なのでまるっと信じるわけにはいかないだろうけれど、その当時の狂乱を知るためにはよかったです。
ただ二段組で非常に長く、登場する人物がすごく多いので読むのが大変でした。さらに下巻もある。いつ読み切れるでしょうか。
まとめ
気軽におすすめしがたいけれど、今の過激思想や原理主義に興味がある人ならこれも参考になるのではないでしょうか。
少なくとも私は大いに参考になりました。
あとこの本が好きなら『約束された場所で』も好きだと思います。
オウムの信者にインタビューした村上春樹の本です。