ブックワームのひとりごと

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ヒモ青年と老女画家の執着関係とおいしいごはん―みお『極彩色の食卓』

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極彩色の食卓 (ことのは文庫)

今日の更新は、みお『極彩色の食卓』です。

小説家になろう版も読んでいましたが紙の本も買っちゃった。

 

 

あらすじ・書籍概要

美大を休学して女性の家を転々としていた青年、燕(つばめ)は、半分引退したような女流画家律子に拾われる。律子は掃除もできなければ炊事もできず、まったく生活力がない。燕は律子の弟子から送られてくる食材を駆使して料理を作るのだった。

 

ずっとこんな小説を読みたかった

私は何でも読める代わりに、作品を手放しで褒めることはめったにないんですが、もうこの作品は最高。文句をつけるところがない。私はこういう作品がずっと読みたかったんですよ。

 

まず老いた女流画家と休学中の美大生の、居候以上恋愛未満の奇妙な関係。料理を作りながら穏やかに暮らしているようで、お互いに執着を持ち始めていきます。

それでいて、心に苦しみを抱えたふたりは、少しずつ救われていきます。両親に絵を描くことを強いられ、美大に入ってから絵が描けなくなってしまった燕と、あることをきっかけに絵に黄色が使えなくなってしまった律子。ある意味で「色」を失った燕と律子が、食事をともにするうちにその「色」を取り戻していくストーリーがもう本当に最高。何百回でも読みたいですね。

 

ストーリー自体はエモーショナルなんですが、語り口は淡々としていて、説明しすぎないところも好きでした。細かい部分はヒントだけ与えて、想像に任せてくれるところは読者を信頼してくれているようで心地いいです。

 

律子に妙な執着を見せる客人、柏木のキャラクターも憎めなかったです。律子にワインやチャーシューなど、高額な食料を持ってくる(そしてその食材は燕が料理する)キャラなんですが、ものばかり持ってくるのが彼の不器用さを表しています。

描写的におそらく金持ちなんだろうけれど、何も持たないヒモ同然の燕が律子を助けてしまったのは相当悔しかったでしょうね。嫌な男なのですが、彼の愛はどこにも行かなかったという点でかわいそうでもありました。

彼にとっては苦いエンディングですよね。

 

まとめ

今でも余韻に浸っていてふわふわしています。いい本でしたね。もっといろいろな人に読んでほしいです。

まさに一枚の絵のような小説でした。

極彩色の食卓 (ことのは文庫)

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上島さんの思い出晩ごはん (TO文庫)

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 同作者の本の感想はこちら。

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