あらすじ・概要
夫婦である周と環は、娘が同性の女の子とキスをしていたことを知る。娘が同性が好きと言うことに戸惑うふたりだったが、夫は同性を好きになったことがあって……。周と環、輪廻をしながら何度も関係を結ぶ人間を描く。
最終話まで読むと印象が変わる
ちょっといい話系の短編集かと思いきや、最終話まで読むと、印象の変わる作品でした。
環と周は、話によって夫婦だったり、友人だったり、はたまた近所のおばちゃんと近所の子どもの関係であったり、さまざまなアプローチから人間の関係性が描かれます。
個人的に好きだったのは、戦後すぐの闇市を舞台にした回ですね。大嘘つきなのですが、なんだか憎めない人が出てきます。しょうもない人かもしれませんが、戦後の混乱期だからこそこういう人に救われるのはわかる気がします。
最終話に出てくる、生まれたことを後悔させない、という言葉が重いです。
友人として、伴侶として、はたまた一時すれ違った他人として、周と環は出会いと別れを繰り返します。
始まりは恋だったとしても、繰り返す輪廻の中で、恋愛以外の関係になることもある、のが面白いですね。
その愛をどう定義するかが変わってしまっても、いつどこにいても相手のことを思っている。その関係性がロマンチックでした。
サクッと読める長さで面白かったです。