母からの借り物。
二次障害(発達障害の人が生きづらさにより精神疾患に罹患すること)がひどかったころのことを思い出しながら読みました。
書籍概要
うつから抜け出し、今は日常生活を送っているギャグ漫画家田中圭一。彼がさまざまなうつを抜け出した人たち「うつヌケ」を取材し、実体験を漫画にしたルポルタージュ漫画。
経験則を、説教臭くならないように語る
寛解(うつの症状がほぼなくなった状態)だけではなく、「抜けきってない人たち」も紹介するところに誠意を感じます。完全に寛解した人たちだけでまとめてしまうと、今不安にさいなまされている人が疎外感を感じてしまうかもしれませんからね。
描き方はユーモアがあって明るい一方、うつ状態になっている人からどう見られているかを意識し、いたずらに不安にしないよう、説教臭くならないよう配慮されている漫画だと感じました。
田中圭一というと手塚治虫風の絵柄でエロギャグを描いている作家、というイメージしかなかったので、ここまで丁寧に漫画でルポを描けるのにびっくりしました。
自尊心を取り戻すまでが治療
うつの人に共通しているのは、ブラック企業だったり、家庭環境だったり、自尊心が傷つけられた記憶をひきずっていることです。
医者は薬を処方してくれますが、それ以上のことはしてくれません。自尊心の回復は自分で行わなければならないのです。
しかし、自尊心の回復は特別なことが必要なわけではなく、趣味を楽しんだり、誰かと話したりする過程で復活していくものなんですね。
「愛されたい」という欲求は健全なもので、それに無理に蓋をしてしまうとストレスを感じやすくなってしまいます。「自分は愛されたがりだ」と知っておくと自分で自分を甘やかすことを覚えられます。
誰かにアドバイスされるより、自分で気づくことが大事なのだなあと思いました。
まとめ
ギャグ漫画家が出したとは思えないほど誠実で優しい漫画でした。
もちろん個人の経験を語っているので、医療的にはあてにならない部分もあると思いますが、うつ状態のときどのように心が回復していくのかを具体的に知れるのはいいと思います。
病気と言うほどではなくてもうつうつとしやすい人にもおすすめです。