ブックワームのひとりごと

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刺激を求めていたらいつの間にか精神病棟に 安藤たかゆき『こころを病んで精神科病院に入院していました』感想

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こころを病んで精神科病院に入院していました。 (メディアファクトリーのコミックエッセイ)

前々から気になっていたもの。なかなかぱっと手に取れないのが私の悪いくせだなあと。

 

あらすじ

刺激への依存によって統合失調症になってしまった著者。精神科の閉鎖病棟へ入院し、そこで淡々とした日々を過ごす。患者の人たちや、看護師さんとの交流を経て、著者の病状は少しずつ良くなっていく。

 

淡々としていてつらくならずに読める

あまり起伏がなく淡々とした語り口なんですが、そこが逆に読みやすくてよかったです。

自分自身の感情に少し距離を置いて、観察する視線で書いてあります。保護室に入るなどの怖いシーンも、作中は混乱しているんですが、描いている著者自身は冷静です。

病気に関するエッセイって、苦しいこと、つらいことが中心になりがちなので、読むほうも身構えてしまいます。このエッセイコミックは、そういう身構えをほどいて読むことができました。

精神疾患の治療に置いて、自分自身を冷静に見つめることは大事です。著者もこれを描くことによって、病識を深めることができたのではないかなと思います。

 

結構普通な閉鎖病棟

著者が入った閉鎖病棟は、うつの人がほとんどだということもあって、静かな環境だったようです。

そこでやりとりする会話、問題になることは非常に庶民的なもので、壁の中も外もあまり変わりないんだなと面白くなりました。

お風呂の温度で悩むところがなんだか微笑ましかったです。

たまに妄想のある人がわけのわからないことを言いだすと、「そういえば閉鎖病棟だったな」と思い出すくらいでした。淡々とした中にたまーに混じる「病気」の要素があります。

閉鎖病棟にも一種の「日常」があって、誰かの異常は誰かの普通なのだなあということを再確認しました。

 

まとめ

あまり起伏がないタイプの作品なんですが、そこが逆に面白かったです。

今もどこかで、著者が元気でやってくれているといいですね。二度と精神科病棟に戻っていないといいのですが。

精神科ナースになったわけ (コミックエッセイの森)

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