今日の更新は、『言鯨(イサナ)16号』です。
久しぶりに著者の本を読めてうれしいです。
あらすじ
砂漠に覆われ、砂を走る船で移動する世界。街は言鯨(イサナ)という死体とともに栄えていた。骨摘みである旗魚(かじき)は捕らえられたあこがれの学者浅利(あさり)と運び屋鯱(しゃち)と出会い、知的好奇心を抑えられずにふたりについていってしまう。
ロマンチックでストーリーも面白い!
砂の惑星! 砂を走る船! 謎の死骸の上に立つ都市! と、ロマンチックな題材が並びます。それだけで手に取ってしまいそうになる作品。
それでいて、ストーリーも面白かったです!
なりゆきで同行し、バディ関係のようになる旗魚と鯱。それを助ける義理堅い少女珊瑚。彼らが知った砂の世界の秘密。
広がった風呂敷はきちんと畳まれ、しんみりと物語とお別れする。そんな話でした。
『言鯨16号』というタイトルの意味に気づいたとき、切ない気持ちが沸き上がってきました。幸せとか幸せじゃないとかそういう問題ではないんですけれど、彼の心が安らかであればいいと思います。
完全なハッピーエンドではないけれど、優しい希望のある終わり方でした。
キャラクターで言うと、鯱のツンデレっぷりが好きでした。プロ意識の強い非合法の運び屋、でも義理堅くてなんだかんだで優しい男です。
犯罪者なのに結構常識的な彼が、知的好奇心の塊でどこか浮世離れしている旗魚に振り回されるのが面白かったです。
虫を使ってふたりを助ける珊瑚もとてもかわいい。ヒロイン枠かと思ったら、がっつり大活躍するところもかっこいいです。とてもいい子でにこにこしちゃいますね。
一冊完結の物語ではありますが、旗魚と珊瑚と鯱の三人道中が楽しかったので、これをもう少し見たかった気持ちがあります。贅沢な願望かもしれませんが。
とにかくこの砂の世界が好きなので、スピンオフとか同じ世界観の別の話とかあったら見てみたいです。
まとめ
すごく楽しかったです。最後は寂しかったけれど、この作品らしい終わり方だったと思います。
売れて、またハヤカワ文庫で本出してほしいなあ。