図書館のインターネット蔵書検索をうろうろしていると、『夢使い』が閉架書庫にあることを知りました。誰がこんな漫画を入れたのだろう……。と思いつつ、廃棄処分されないように借りることにしました。(図書館では長期間借りられない本は廃棄される可能性がある)
今回は、久しぶりに読み返した感想です。
『夢使い』とは?
『夢使い』とは植芝理一が描いた漫画。おもちゃの力を借りて「夢」を操る「夢使い」たちが、奇妙な事件を解決していきます。
おそらく打ち切りであり、回収されていない伏線がいくつかあります。ただ、章ごとにはきちんと終わっているので尻切れトンボな感じではありません。
大きく分けると「虹の卵編」「鉱物の聖母編」前後編である「最終話」があります。
全力疾走する変態っぷり
まずびっくりするのが第一シーズンである「虹の卵」。少女の性的衝動を扱っており、性転換、異性装、同性愛、ナルシシズム、異形化などなど、これ一遍で性癖博覧会になっています。しかもそれを行っているのが、中学生という……。局部を直接描写する部分がないだけで、セックスシーンまであります。フィクションとはいえ全体的にやばい。図書館に置いておいて大丈夫ですか?
メインストーリー以外でも、給食のおばちゃんがなぜかメイドさん、体操服がブルマー、あちこちにあふれる少女趣味と性癖がよりどりみどりです。
しかし倫理的にやばいのに何だかんだで楽しく読んでしまうのは、少女のものだろうと男子のものだろうと欲望が否定されない、ある意味公平な雰囲気があるからでしょうね。
悪役の願望ですら、頭ごなしに否定されないので、「あっここはこういう世界なんだな」と思えます。
世界観はアレだが物語は王道
そんな大分様子がおかしいこの作品ですが、メインストーリーはいたって王道です。つまり、「日常から不思議な世界に迷い込み、また日常の世界に戻る」という内容。
おもちゃやアニメなどのサブカル要素をふんだんに使いつつ、最後には日常に帰るところが、健全でいいんですよね。空想がテーマなのに、世界が空想の中に閉じていかない。
「虹の卵」も「鉱物の聖母」も、カップルふたりが自分たちだけの世界に耽溺せず、未来を選択するために決断します。願望や欲望がギトギトになるほど飛び交うこの漫画で、その決断がどれほど美しく見えるか。
グロデスクだったりえぐいシーンも多々あるのに、終わり方はさわやかで、読んでよかった! と思えます。
ロリコンショタコンのノリがひどいので、そういうのが苦手な人にはおすすめしませんが、普通の漫画では物足りない人にはぜひ読んでほしいです。