あらすじ・概要
中学の合唱部に所属する聡実は、ヤクザの狂児と出会う。彼の所属する組の組長はカラオケ狂いで、カラオケ大会で最下位だった者に罰ゲームを施すという。いやいやながら聡実は、狂児に歌を教えることとなった。一方で、聡実はある悩みを抱えていて……。
トンチキでありつつテクニカルな漫画
ヤクザと中学生のトンチキ系ブロマンス。しかもただ笑えるだけではなくて、演出や設定がきちんと考えられているのがすごいですね。
まずヤクザと中学生とカラオケルームという取り合わせがミスマッチすぎて笑えます。しかし登場人物をヤクザにすることによって荒唐無稽な設定や展開でも「まあヤクザだからな……」と許容してしまう力を持たせています。だって面白ヤクザが出てきたらさあ……。ヤバい罰ゲームのカラオケ大会も中学生への距離感のおかしさも「そういうものかな」と思うじゃないですか?
そしてトンチキな物語でありつつ王道も抑えています。声変わりによって自分の合唱パートが歌えなくなりつつある聡実は、不安と鬱屈を抱えています。その鬱屈が、狂児に出会いカラオケを教えることによって溶け出していき、クライマックスで完全に解毒されます。
この解毒の仕方もめちゃくちゃなんですが、これもなぜか納得してしまうんですよね。悔しい。
荒唐無稽な物語でありつつ、読者を振り落とさない工夫が随所に施されていて、非常に技術的です。
勢いの良さとクオリティが同居する作品で素晴らしかったです。
あとブロマンスといいつつもカラッとしてるし、基本はコメディなので男性にも読みやすいのではないでしょうか。