あらすじ・概要
不安障害になってしまった漫画家でイラストレーターの「いこまん」は、同居人であり恋人である「トリさん」と夜の散歩を始める。暗い夜道の中、何かを見つけたり、コンビニや食堂に寄ったり……。病による不安とともに、夜の世界を彷徨するコミックエッセイ。
繊細さが光る散歩エッセイ
精神疾患となった主人公を彼氏が支えるというある意味「理解のある彼くん」話ではあるかもしれません。しかし作品は病気は治癒することより、不安障害の人間が見た夜の世界を漫画として描き出すことを重要視しています。
コンビニやドラッグストアに寄ったり、路地の中のおかしな影が気になったり、言葉にすると何気ないものが、丁寧に漫画として描かれています。
主人公である著者は根が繊細で、感じやすい人なのだと思います。リアリティのある絵柄ではないけれど、語り口と描写で「本当にあるもの」のように見えてきます。絵の中のにおいや温度が感じ取れるようでした。
とても美しい作品ですが、人生なので実際には美しいことばかりではないとは思います。だけど精神の病と暮らす日々を、こういう美しい切り取り方をして見せるところに救いを感じました。病はつらい、苦しいけれど、それでも何もない毎日ではないのだと。
ストーリー性が少なく、本当にただただ散歩をしているだけの作品でしたが、読んでいてとても癒されました。