ブックワームのひとりごと

読書中心に好きなものの話をするブログです。内容の転載はお断りします。

恋愛や家族に夢を持てない女性が母親になる―ヤマダカナン『母になるのがおそろしい』

このブログには広告・アフィリエイトのリンクが含まれます。

母になるのがおそろしい (コミックエッセイ)

 

あらすじ・概要

結婚し、子どもを考える年頃になってきた著者。夫は子どもを持ちたいというものの、著者にはトラウマがあった。それは恋愛依存の母親に育てられたこと。ろくでもない男をとっかえひっかえする母親の影響で、著者は恋愛に夢を見られなくなってしまった。著者はわだかまりを覚えながら出産するが……。

 

人生のひとつとしては面白い

ここまで子どもを産むことに葛藤があるのに何で二児ももうけるんだという根本的なツッコミどころがありますが、「母性は誰もがすぐに持てるものではない」という話としては面白かったです。

 

子どもを産んでも最初は義務感からしか育てられず、そんな自分に自己嫌悪に陥っていた著者。しかし子どもを育てるうちに、少しずつ子どもを「かわいい」と思っていきます。

また、恋愛や家族に夢を持てなくなった原因である母娘関係について振り返り、母親の過去を知ることによって少し自分自身の過去も清算します。

 

毒親ときっぱり別れて幸せになるタイプの作品ではなく、このコミックエッセイが終わっても著者と母親の関係は続いています。しかしそれはそれでいいのだと思います。許せないところと許せるところが混在してもいいし、「縁を切る」というのが絶対の正解ではありません。毒親の対処の方法にはグラデーションがあります。

 

すごいメッセージ性やドラマがあるわけではないですが、ひとりの人間の人生としては面白かったです。でこものコミックエッセイを著者の子どもに見せない方がいいと思います。子どもって親に愛されて生まれて来たと思い込んでいたい生き物なので……。