あらすじ・概要
多忙な広告会社に勤める吉川は、同僚から「ここ一週間をタイムループしている」と告げられる。半信半疑だったが、数々の証拠を見せつけられて信じることに。タイムループを乗り越えるには、どうやら部長がカギになっているらしい。吉川たちは部長にタイムループが起こっていることを知らせようとするが……。
シンプルに脚本が面白い、堅実な良作
ここ最近見た邦画で一番面白かったです。
まずシンプルに脚本が面白いです。タイムループネタはかなりやりつくされたベタな設定ですが、舞台を「修羅場状態の広告会社」にしたところが個性的でした。また、何度もタイムループするうちにクライアントの無茶振りにすぐ対応できるようになったり、ループする時間のうちにスキルアップしてしまうところも笑いました。
とにかく次々に話が展開していくので、中だるみするシーンがまったくありません。展開が早いまま伏線を敷きまたしっかり回収していくので、爽快感もあります。
また、「自分のために生きる」というメッセージがトレンドになる昨今で、あえて「他人のために行動するのもいいんじゃない?」という展開になっていくのもよかったです。
主人公の吉川はタイムループを繰り返すうちに、どんどんクオリティの高い仕事ができるようになっていきますが、それを手放さなければならなくなったとき、「自分のため」という名目で行動することの限界を知ります。
それでいて、「他人のために行動すること」が絶対善として描かれるのではなく、自分のために行動することが状況を打破する場面もあります。要はバランスの問題で、「自分のため」だけでも「他人のため」だけでも人生上手くいかないということなのだと思います。
自分のために生きて来た人間が他人のために行動するとき、また他人のために生きて来た人間が自分のために行動するとき、人生は変わる。その対比がとても感動的でした。
コメディだけど容姿や年齢、性別を揶揄するギャグがまったくなかったのも安心して見られました。
広告はネタっぽいけれどかなり堅実な映画で、多くの人に見てもらいたい作品です。