あらすじ・概要
技術の遅れたカブールの民として生まれたルークは、支配者であるヴィクト人を騙して金銭を得ていた。命の危機によってルークは神から特別な力をもらう。それは、「生殖能力の代わりに、贋札を作る能力を得る」ことだった。無限に生成される贋札を武器に、ルークは奪われた姉を取り返そうとする。
倫理のない作品をどう作るか、のひとつの答え
トンチキギャグ漫画なんですが経済について深く学べて面白かったです。どういうこと?
主人公のルークは贋札を体から出す能力を持っており、その能力を使って姉のハルを助け、ひいてはカブール人を差別から救おうとします。
贋札はほぼ本物と変わりありませんが、ただひとつ、番号だけがすべて同じです。番号を知られてしまうと、国内中に番号を公表されて贋札が使えなくなります。そこで贋札の番号を知られたくないルーク側と、贋札の番号を知りたい敵側の攻防が起こります。
どちらかが勝った、と思ってもそこから二転三転する予測のつかないストーリーにハラハラしました。
そしてこの作品には倫理のないキャラクターがたくさん出てきます。お金のためなら誰でも裏切るグレシャム、カブール人なのに帝国に協力するレジャッド、その他脇役などなど。
彼らの倫理のない行動に笑ったり驚いたりしながらも、そういうキャラクターと臆せず交渉をしていくルークの胆力や、他人への許しの力がすごいです。
何をしたとしてもクズはクズなんですが、交渉のテーブルにつけば共存していけるかもしれない、というテーマは希望ではあります。
同時に、この作品がいい人ばかりのモラルが高い作品だったとしたら、こうして政治や経済について興味を持つこともなかったと思います。いい人ばかりの話で政治や経済について話すと、説教臭くて読んでいられません。
求められる倫理がどんどん変化していく昨今、倫理のない作品をどう作っていくか、のひとつの答えだと思います。