ブックワームのひとりごと

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実際に培養肉を研究する学者が語る培養肉の将来性と課題―竹内昌治・日比野愛子『培養肉とは何か?』

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培養肉とは何か? (岩波ブックレット 1072)

 

あらすじ・概要

畜産による環境汚染や、動物福祉の問題から注目され始めた培養肉。日本国内で培養肉の研究を行っている著者が、研究の進捗状況とこれからの課題、さらには培養肉を研究するメリットを語る。「動物を殺さない肉」が描き出す、未来の社会とは……。

 

培養肉を研究している人間だからこそ語れる本

著者が実際に培養肉を研究している側なだけあって、具体的な話が知れて面白かったです。たとえば培養肉の研究と言ってもさまざまなものがあって、ミンチ型かステーキ型か、あるいは植物由来の物質を混ぜるかどうかなど、方向性に違いがあります。

そして培養肉を研究する上での困難も書かれています。そもそも培養肉の存在を前提とする法律がなかったので「食品」としてどう扱うか決まっていなかったり、肉を培養する上で安全が保障できる材料を調達するのが難しかったり。この辺りは私みたいな一般人が想像することのできない事情なのでとても新鮮でした。

 

地域別に「培養肉を食べてみたいか」というアンケートを取ってみた結果の章も面白かったです。日本人は比較的培養肉について保守的ですが、他の国の「食べてみたい」「食べたくない」という理由を調べるとお国柄を感じさせます。

 

私はビーガンでもエコロジストでもないですが、将来人類が畜産を続けられなくなる可能性はあると思っています。鳥インフルエンザの流行もその可能性のひとつでしょう。

畜産を続けられなくなった瞬間から「肉の代用品を作ろう!」という研究を始めるのは遅すぎます。という意味で、今肉の代用品について研究するのは理にかなっていると思います。

だから「まずそう」とか「なんとなく怖い」という精神的な批判にとどまらず、いろいろな方向から意見が語られてほしい話題です。