ブックワームのひとりごと

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【ハッピーエンドとは思えない結末にやるせなくなる】ミナモトカズキ『怪獣になったゲイ』

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怪獣になったゲイ (ビームコミックス)

 

あらすじ・概要

自分がゲイだと自覚する高校生、安良城貴は、ひそかに恋心を抱いていた教師、黒田にゲイという存在を否定しているところを聞いてしまう。それ以来、安良城の顔は醜い怪獣の形になり果ててしまう。黒田も含め、周囲は安良城の顔を元に戻す方法を探るが、黒田にゲイであることを受け入れてもらえない安良城は悩み……。

 

自分のことを振り返らない人間もいる

徹頭徹尾きつい話であり、自分のことを振り返ってしまう内容でした。しかし、自分のことを振り返らない人間は、永遠に振り返らないという話でもあります。

 

主人公はゲイではありますが、それ以外では一般的な男子学生です。劣等感にさいなまれることもあれば、怒りを感じて暴力的な衝動に流されることもあります。

主人公がなぜ怪獣になったのか、その理由を明かされると逆に主人公の立場のつらさが強調されてしまいます。

マイノリティでいると、好きな相手に自分を受け入れてもらえないかもしれない。好きな相手に拒絶されることに怯える日々の描写はつらかったです。

 

最後は他人に受け入れられるか受け入れられないかということに依存せず、自分で道を切り開いていきます。

しかし皮肉なラストシーンも含めて考えると、これが即ちハッピーエンドだとは思えません。

自分がマジョリティであることを信じて疑わない人間は、怪獣になる人の気持ちがわかりません。主人公は自分を責める環境から出ていくことができてよかったですが、周囲に偏見がなければそれはしなくていい苦労のはずです。

やるせなさと同時に、無意識に人を傷つけてはいないかと怖くなる作品でした。