ブックワームのひとりごと

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『勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録』ロケット商会 電撃の新文芸 感想

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勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録 (電撃の新文芸)

 

あらすじ・概要

勇者となることが刑罰として扱われている世界。懲罰勇者のザイロは、なりゆきで魔王討伐の武器である「女神」と契約してしまう。ザイロたち懲罰勇者は、絶望的な作戦を任される。

 

ろくでもない男たちが魔王を倒す

ろくでもない男ばっかり出てくるライトノベルです。倫理がない男が大好きな人にはおすすめしたいです。

この作品では「勇者」になることは刑のひとつであり、勇者たちは重犯罪を起こした人間ばかりです。

何かあればすぐ泥棒してしまう男、陽気だけれど言っていることが常におかしい暗殺者、流れるように嘘をつく詐欺師、王を名乗るテロリスト。

ここまで倫理のないキャラクターが揃うことってないので、楽しいです。

それでいて、倫理のなさをちゃんとエンタメとして楽しめる形に作り上げているのが素晴らしいです。

 

ヒロインであるテオリッタも、「主人公に好意的で、全力の信頼を持っていて、助けてくれる」ヒロインをここまで救いのない設定で書けるのはすごいです。

かわいらしいところと、恐ろしいほどの攻撃が可能な「武器」としての底知れなさを同時に持ち合わせているところが面白かったです。

 

世界観の中ではザイロは常識的で、利他的な行動を繰り返します。しかし、読み進めるうちに、彼にもどこか欠けたところがあることがわかります。

地獄のような状況でも、何の見返りがなくても、ついつい人のために行動してしまうザイロ。彼もまた「まとも」からは外れています。

そんなザイロがテオリッタと相棒関係を結び、共に共闘するのは、歪んでいるゆえに美しかったです。

 

一巻できりのいい終わり方をしていますが、続きが読みたくなる内容でもあります。