あらすじ・概要
南の島に暮らす少女壱与は、気がふれているがときおり神がかりのようなものを示すばばさまと暮らしていた。ある日島に男たちがやってきて、壱与とばばさまは連れ去られてしまう。やってきたのは男性の王と「聞こえさま」と呼ばれる巫女が統治する伊都国だった。
倫理がないけど共感できる古代架空歴史
現代とまったく違う価値観の作品なのに、現代人である私も共感できるところがあり、面白かったです。歴史もので過去の時代の倫理のなさ、人権感覚のなさを描いた上でエンタメとして楽しめるものを書くのは難しいと思います。しかしそれに成功している漫画です。
主人公は壱与という、神がかりの力を持つ少女です。しかし彼女は狂言回し的な立ち位置であり、心理描写においては今の「聞こえさま」である日女子や、彼女の周りの男たちにページが割かれています。
人の命が軽く、容易く戦争や殺人が起こる世界観で、居場所を求める人々の姿は哀しいです。
差別も横行しており、弔いの作業をする人が蔑まれたり、居候の壱与が家を追い出されたりと、やるせない気持ちになります。しかし、この世界観ならそうなるだろうなという説得力があります。
結末は史実とは全く違うものになりました。ここは肩透かしになった人もいそうですが、「史実を元にしたフィクション」としては悪くない終わり方だったと思います。
因果応報で救いのない死に方をしたキャラクターについても、嫌いになれない作品でした。