あらすじ・概要
関東大震災で大きな被害を受けた東京。画家,文筆家であった水島爾保布は地震発生直後から、デマや流言に惑わされる人々の姿を書き残していた。災害による混乱、恐怖。そして朝鮮人や、朝鮮人に間違われた人たちの虐殺が発生する。関東大震災の一次資料を読み解く本。
流言と人間の善と悪の物語
関東大震災の一次資料、つまりは当時の人が書き連ねた文章を現代の学者が解説している本です。旧かな遣いで読みづらいですが。解説を読みながらであればなんとか理解できます。
関東大震災では、多くの朝鮮人が虐殺されました。この行為は、当時の倫理観としても残虐な行為であり、さまざまな文献で批判が残されています。
一方で、虐殺を肯定し、都合のいいように解釈する人々もいます。人間の善と悪を一冊で読んだような気がしました。
その上、朝鮮人たちが関東大震災の前から過酷な差別にさらされており、心が痛みました。
朝鮮人にまつわるもの以外でも、関東大震災の被災者の間では多くのデマが飛びました。デマを言う動機や状況は、現代人とあまり変わらない気がします。東日本大震災でも、「ライオンが逃げ出した」というしょうもない嘘を言った人がいます。ねじくれた承認欲求を感じました。
朝鮮人虐殺を否定するのは、当時朝鮮人を庇った善意ある人を否定することでもあります。これからもきちんと歴史として語られてほしいです。