ブックワームのひとりごと

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暗いエッセイだが周りの暖かさに救われる―先崎学『うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間』感想

うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間

今日の更新は、先崎学うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間』です。

将棋好きの親からの借り物。

 

あらすじ

多忙とストレスから、うつ病を発症した先崎学。彼は入院し、療養生活に入った。退院してもなかなか動くことができず、病状は一進一退を繰り返す。それでも復帰したいという思いは強く……。

 

吸い込まれるような自殺衝動

私もうつ状態だったことがあるので、著者の体験を生々しく感じることができました。

 うつ病希死念慮(自殺衝動)について、著者はこう語ります。

正確にいうと、電車に乗るのが怖いのではなく、ホームに立つのが怖いのだった。なにせ毎日何十回も電車に飛び込むイメージが頭の中を駆け巡っているのである。いや、飛び込むというより、自然に吸い込まれるというのが正しいかもしれない。死に向かって一歩を踏み出すハードルが極端に低いのだ。

(P13)

この、「自然に吸い込まれる」という感覚はすごくよくわかります。ただ漠然と死にたいのではなく、目の前に死ぬ方法があると実行しようとする自分がいるんですよね。

言葉にしてみると、「自殺は病死」というのがよくわかるなと思います。自殺する人を責める前に、ストレスを取り除いたり治療を行ったりしなければなりません。

 

鬱々として暗い話なんですが、文章が淡々としているのでそこまで読者が暗くならずに済みます。

そしてさりげなく著者のことを気遣ってくれるプロ棋士の仲間たちにほっとします。ときに遠慮したり戸惑ったりしながらも、著者のことを心配しているのが伝わってきます。うつのときはしんどくて人付き合いどころじゃないのですが、「待っていてくれる」人がいるのは救いですね。

 

うつ病のことを文章に書くというのは、認知行動療法としていいと言われているので、この文章を書いたことをきっかけに、著者の頭の中の整理ができるといいなと思います。

自分を少し突き放して見ることによって、自分がよくなっていることを自覚し、再燃への対策をとることができますから。

 

まとめ

 うつ病エッセイとして面白かったです。今度はしんどくならない程度にがんばってほしいです。勝負の世界なのでなかなか難しいかもしれませんが。

暗くてシリアスな内容なんですが、読んでいて少し前向きになれる本でした。

うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間