『虐殺器官』を読みました。
読みたいと思いつつ、ヒネてるので流行りのものにはすぐ手出しできなかったのでした。
あらすじ
先進国は平穏を保っているものの、発展途上国では紛争や虐殺が多発している近未来。アメリカ軍の特殊部隊に所属しているクラヴィスは、紛争地域に必ず現れる男、ジョン・ポールを追います。彼の持っている「虐殺の言語」とは何なのでしょうか。
世界にはびこる虐殺の言語
虐殺の言語と聞いて思い出したのは第三帝国の言語「LTI」―ある言語学者のノート ですね。ネタ元の一つだったら面白いです。
個人が紛争を振りまくという点ではオイレンシュピーゲルのリヒャルト・トラクルも思い出します。オマージュと言うほど刊行が離れていない気がするし、共通の元ネタがあったりするのでしょうか。
あんまり読みやすい本とは言えないですが、社会風刺や批判の効いたSFらしいSFだなあと感じました。今の平穏な暮らしは本当は平穏じゃないかもしれない、という不安にさせられる小説です。
他の人を犠牲にしても今の平和を守りたいという気持ちは、正義ではないとしても共感はできてしまいます。両親や子供、恋人を守るために誰かを虐殺する……という構図は残酷だけれど物悲しくもありますね。
拡張現実やバイオ技術など、SF的なギミックもかっこよかったです。本題とはそこまで関係ないんですが、こういう設定があるとわくわくしますね。
まとめ
闇の深いSFですが、それゆえにSFらしいSFだったなあと思います。
SFに社会批判を求めている人にはおすすめできる気がします。