ブックワームのひとりごと

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日常に笑いを見出す創作落語の世界 中島らも『牛乳時代 らも咄』感想

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中島らもの『牛乳時代』を読みました。

 中島らも創作落語を集めた本です。

牛乳時代―らも咄 (角川文庫)

牛乳時代―らも咄 (角川文庫)

 

 書籍概要

コピーライターでエッセイストである中島らも。彼の作った創作落語を収録した一冊。男のもとに年寄りの引っ越し屋がやってくる『宿替え奇談』占い師から「畳では死ねない」と言われた男の話『たたみ往生』など。

各話感想

『宿替え奇談』

老夫婦の引っ越し屋に振り回される男性の話。

ホラーなオチなのにあまり怖くないです。こき使われている主人公かわいそうで笑えます。

『鶏ぶるまい』

猿人のぬいぐるみを着てUMAを作り出し、町おこしをしようとする村長と助役。

タイトルの意味がだいぶアレ。ちょっとやさしさも感じます。

『手造り、罪造り』

手作りをテーマにした店に迷い込んでしまった主人公の苦労を描いています。

風刺的な要素も感じる作品。こんな手作りはいやですね!

『たたみ往生』

占い師に「たたみで死ねない」と言われた男が畳を持ち歩くようになる話。

まず発想が面白すぎて脱帽します。頭のいい人が考えるギャグではなかろうか……。そしてオチにももう一段あり。

『大人物』

大家を丸め込んで家賃滞納をごまかしてしまう男の話。

このオチは正直読めちゃったけど文章が好きだから気にならなかったです。

『ふぐの通夜明け』

ふぐの毒で死んだ男が、お通夜で息を吹き返してしまい、そこでよからぬ話を聞き……。

みんな好き勝手なこというけど、本人がいないところでそういうこと言う人っているいる。あるあるネタとしても楽しめました。

『牛乳時代』

子ども同士のけんかで学校に行くことになった親の話。

入江くんにむかつくの正直すごくわかります。なんで子どもってああいうくだらないことをする(していた)んでしょうか……。

『水に似た酒』

酒の講釈をしてくる友人に怒った話。

いいものをありがたがっても実際のところは宝の持ち腐れみたいなことはよくあることで、結局自分の好きなものを自分なりに楽しむのが一番いいんでしょうね。

オタクにも当てはまりそうな一作。

『噂のサイコセラピィ』

サイコセラピーに来た男の話。

ぜんぜんダメなセラピストが面白かったです。いいかげんすぎて笑えます。そしてオチも好き。

『鉄工バンドが行く』

バンドを結成することにした社長と部長の話。

どんどんおかしなバンドになっていくのが面白かったです。逆に聞きたくなってくるから不思議。一回聞いたら絶対懲りるでしょうけれど。

スウィートホーム

男性が帰ってきたらなぜか妻や家の様子がおかしく……。

オチはかなり見え透いているんですが、どちらかというとそこまでの過程を楽しむタイプの話なんでしょうね。

勘違いがなかなか解けないのがはらはらしました。

『うし相撲』

貧乏な相撲部屋が牛に相撲をさせようとする話。

汁だけのちゃんこが悲しすぎて笑いました。ここに至るまで徐々に具が減っていったんでしょうね……。

『たばこぎらい』

たばこ嫌いの会社に入社してしまった喫煙家の男は、煙草を吸うために地下室へ……。

世にも奇妙な物語っぽさがあります。やろうと思えばホラーに書き換えられそうです。落語なので笑い話ですが。

『弁護士物語』

とある弁護士を訪ねてきた男の依頼とは……。

オチはべたなんですが、のろけの内容がアホすぎて笑ってしまいました。のろけている人の特徴をよくとらえています。

『耳かき始末』

耳かきしたくてしたくてたまらない男が耳かき横町に駆け込む話。

読んでいて耳がかゆくなってきました。耳かきがしたくなったときに耳かきがないと発狂しそうになりますよね。

『太平養生高血圧』

高血圧になった男が医者にいろいろ注意される話。

これもオチが素晴らしいですね。読み返してやっと仕込まれたネタの多さに気が付きました。

『つちのこ』

つちのこを捕まえようとしたやくざの話。

つちのこ、今はモンスターか妖怪みたいに扱われてますけど昔はUMAとして流行ってたんですよね。ちびまる子ちゃんでも探してたし。相当なブームだったんですね……。

まとめ

こうして見ると、耳かきとか高血圧とか、日常的なものから面白いネタを探し出しているのがわかります。そこがポイントなんでしょうね。

ショートショートが好きな人は楽しく読めると思います。

 

今夜、すベてのバーで (講談社文庫)

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