蛇が出てくる話が読みたいなあ、ということでセレクトしました。
あらすじ
故郷である拝島(おがみしま)に返ってきた悟史。十三年ぶりの大祭を控えた島で、「あれ」と呼ばれる忌まわしい化け物が出るという噂が立った。悟史は幼なじみで「持念兄弟」の光市とともに「あれ」の正体を追う。
因習が根付く島での冒険
変わった因習が根付く島、謎の化け物、かすかに感じる神様の気配。そういうものであふれていて楽しかったです。
島という閉鎖的な空間だからこそ、「何があってもおかしくない」という気分になります。こういうとき、島っていう舞台設定は便利ですね。幻想的なものとの親和性が高いです。
そんな中で、村の人たちが祭りの準備をしたり、女の子たちが祭りのための踊りの準備をしたりするシーンがしっかり描かれていて、物語に現実味を与えています。
祭りの準備の中で起こった不思議なできごと。その祭りの当日にさまざまな謎が解かれ、島は日常へと帰っていく。そのストーリーの筋は王道だけどやっぱり面白いです。
人間関係にオチがない
全体としては面白かったけれど、気になる点もちょこちょこありました。
ひとつは悟史の心理描写にかなりページが割かれているのに、終わってみると、彼の心境の変化や持念兄弟との関係において、はっきりしたオチが感じられなかったことです。
ここまでいろいろ書かれているから、心理的な面や人間関係において何かオチがあるものだと思っていました。なんだか肩透かしです。
もうひとつは、「神社の息子の荒太が人前で服を脱がなかった」という設定があるのですが、その設定の理由が見え見えのなのに登場人物が気づくのが終盤に入ってからで、まだるっこしかったです。
読者がわかっている伏線を、引き延ばされると「早く気づけよ!」って気分になりますね。
まとめ
それなりに面白かったけれど、すごく好きってわけでもない感じですかね。
ただ、「閉鎖的な場所での因習」というテーマはすごく好きなので、その点では楽しめました。