ブックワームのひとりごと

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それぞれの『運命の女の子』を描く短編集―ヤマシタトモコ『運命の女の子』感想

 運命の女の子 (アフタヌーンKC)

今日の更新は、ヤマシタトモコ『運命の女の子』です。

この人の短編集はときどき読みたくなりますね。

 

あらすじ

大量殺人鬼と対峙する女刑事を描いた「無敵」、男女が演劇をしていたころを回想する「君はスター」、すべての人が呪われた世界で一人だけ呪われていない少女の話「不呪姫と檻の塔」を収録。

 

「運命の女の子」というタイトルがぴったり

「無敵」は読んでいると情緒不安定になります。ある女の子を取り調べる刑事の話。

最後の怒涛の〇〇シーン(ネタバレ)はかなり怖かったです。これだけ恋愛色のない話だけに、作品の中で異様な存在感でした。

 

 「君はスター」はすごく業の深い話でした。ある意味どこまでも平行線な三人。

あまり美人ではない少女を中心に、美しいふたりの人生が繰り広げられていきます。はたしてその本心は……というと、なんともやるせないです。

才能を持つ人にあこがれ、焦がれることの美しさと残酷さを感じました。

大団円には絶対にならない三角関係にはぐっときます。漫画ならではの心情のあいまいさが、物語を引き立てていました。

とてもビターな作品ではありますが、ふたりの「あこがれ」は正真正銘本物なのだろうなと思うと、出会ったことがうらやましくもあります。

少し歪んでいて、でもきらきらした恋愛漫画でした。

 

「不呪姫と檻の塔」はすべての人が呪われている現代ファンタジー。ある日世の中の人が次々眠りに落ち始め……という話です。

コンパクトにまとまりつつ、オチが粋でいいですね。読み終わってさわやかな気持ちになりました。登場人物にはみんなハッピーに暮らしてほしいです。そういう意味で、現代おとぎ話という雰囲気で下。

「呪(スペル)」というものがなくても、苦労する人は苦労するし、しないひとはしない。痛みや悲しみに「意味」を求めてしまうのは、ある意味人のわがままなのかもしれません。

 

三つの短編を読んでみると、タイトルの『運命の女の子』はぴったりだなと思います。みんな、誰かの「運命」を決めていました。

とある女の子が、周囲の人の人生を変えていく。ネガティブな意味であれ、ポジティブな意味であれ。そういう漫画でした。

 

まとめ

『運命の女の子』というタイトル通りの短編集でした。

心をがたがた揺さぶられる、ドラマチックな漫画です。物語に振り回されたい人はぜひ。

運命の女の子 (アフタヌーンKC)

運命の女の子 (アフタヌーンKC)