ブックワームのひとりごと

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「知らない人に好かれる」ことを警戒する理由が知りたければ、高野秀行『世にも奇妙なマラソン大会』を読んでくれ

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世にも奇妙なマラソン大会 (集英社文庫)

世の中広いのでそうでない人がいないとは言い切れないけれども、だいたいの女性は「知らない人にあからさまに性的な好意を向けられたら困る」と思っている人が多いのではないでしょうか。

まだ何も実行してない状態で、「好意」だけで嫌なのか……とお思いかもしれないんですけれど、これには事情があるんですよね。

高野秀行『世にも奇妙なマラソン大会』に収録されている、「ブルガリアの岩と薔薇」という短編ノンフィクションが男性にその感情を解説するのに役立ちそうなので、布教もかねて紹介します。

関係上、作品の内容をすべてネタバレしてしまっているので、気になる人は購入してからこの記事を読んでください。 

 

ブルガリアの岩と薔薇」あらすじ

探検家でありノンフィクション作家である著者は、ブルガリアでおじさんに「うちに泊まりなさい」と誘われる

ところがそのおじさんはバイセクシャルのようで、著者は口説かれてしまう。いろいろ優しくされた著者は「女ってこんな風に男に優しくされているのか、うらやましいな」と思う。

口説きおじさんはとても紳士なので、何もしなくても著者を泊めてくれる。

だが、著者は夜中に何度も目を覚ます。おじさんに「何かされるのでは」という感情がぬぐえなかったのだ。

著者は「女は全然ラクじゃない」と思い夜を明かすのであった。

 

 知らない人に好かれる恐怖

私はこれを読んだときすごく感動しました。「知らない人に好意を寄せられる」という怖さが男性の視点で非常に上手く書かれていたからです。

おじさんは著者がヤらせてくれなくても、優しさを崩すことはないし、朝ごはんもごちそうしてくれます。それでも怖いものは怖い。

実際にひどいことをする男性は、ごく一握りだと思います。が、その一握りにひっかかると、人生が変わってしまうくらいショックを受けるかもしれません。

だから、「この人は、私が振ってもひどいことはしないだろう」という人でないと、好意を持たれることすら怖いんだよな……。

そこに至るまではお互いのコミュニケーションが必要です。「この人は無害だ。欲望より理性の方が強い」と確信が持てるまでは、ぶっちゃけると「男性は怖いもの」なんですよ。

だから「自分はあなたを性的な目で見てるけど、ひどいことはしないし、あなたの気持ちを尊重する」ということを伝えることが大事だし、それが、「口説く」ってことなのかなと思います。

 

というかたまに、男性の結構な割合が「女性は暴力をふるってこない」という前提を持っていそうなのがときどきびっくりしますね。

まあ腕力的に確率は低くはあるんですけど。ときどきいるので。

 

まとめ

というわけで、『世にも奇妙なマラソン大会』収録の「ブルガリアの岩と薔薇」をぜひ読んでくださいね。

この著者の作品は基本面白おかしい感じなんですけれど、さらっと深い洞察を混ぜてくれるのが好きです。

文庫本のほか、電子書籍でも買えます。ぜひぜひぽちっとしてください。