今日の更新は、九岡望『地獄に祈れ。天に堕ちろ。』です。
あらすじ・概要
あの世から死者があふれ出してしまった東凶(とうきょう)。ミソギは、閻魔大王からの借金を返すために亡者を冥界に送り返している。彼は、泳(くくり)という少女を助けたことから、「魂に効く」という麻薬にまつわる陰謀に巻き込まれる。麻薬を追ってきたアッシュという聖職者と共闘する羽目になるのだが……。
こんな人におすすめ
- とにかく頭空っぽにして読める本が読みたい人
- バディものが好きな人
- 複雑な世の中に疲れている人
頭空っぽにして読める「最高級の駄菓子」
ミソギ、死者。嫌いなものは聖職者。犯罪亡者をぶっ飛ばし、地獄の閻魔に引き渡す荒事屋にして……シスコン(妹)!
アッシュ、聖職者。嫌いなものは死者。聖なる銃をぶっ放し、死者を殺しまくる某機関の最終兵器にして……シスコン(姉)!!(公式HPより)
この人物紹介の時点で、「ああ、これは頭空っぽにして読むライトノベルなんだな」とわかりました。実際にそうでした。
しかしながら、読み進めていくとちゃんと計算されて作られていることがわかります。キャラクターの設定と展開がかみ合っていて無駄なところがありません。
読者が気持ちよく頭空っぽになれるように、爽快感のある展開も、個性的なキャラクターも作りこまれています。さながら「最高級の駄菓子」みたいな作品です。
ミソギの相棒アッシュがイケメンだし、女性に失礼な描写もほとんど出てこないので、女性にもおすすめです。
公式PVを見て「いいな!」と思えたら楽しめると思います。
◎ここからネタバレ◎
「キャラクターの設定と展開がかみ合っている」の例を挙げてみます。主人公ミソギはシスコン(妹)なので年下の女の子に妹を見てしまい、ひどいことができません。一見甘ちゃんな設定なのですが、ヒロインかつマクガフィン的存在泳(くくり)を助ける理由になったり、敵役の女の子を協力させるきっかけになったり、設定として生き生き動いています。
一見めちゃくちゃな設定を背負っていても、ちゃんとその設定が死んでおらず、ストーリーに生かされているところがすごく面白いです。
ストーリー自体は凝った伏線もどんでん返しもなく、王道に進んでいきます。それでもページをめくるのがとても楽しかったです。なぜなら、キャラクターの個性が物語を牽引していくからです。
1巻できっちり終わってはいますが、続けられそうな話ではあるので、続刊があれば読みたいです。