今日の更新は、『このかけがえのない地獄』です。
あらすじ・概要
魔法少女になる夢を諦められない少女、自分が漫画の登場人物であることに自覚があるラブコメ漫画のヒロイン、女装をして好きな女の子と付き合う羽目になる少年……。若者たちの痛々しい青春をかわいらしい絵柄で描いた短編集。
こんな人におすすめ
- この絵柄が好きな人
- 一癖ある女の子が見たい人
- 漫画からフェチを感じたい人
一癖ある女の子が最高
ストーリー的にはもう一声ほしいところもありましたが、それぞれ独特の世界観、人間観があり楽しめました。
お色気だったりフェチっぽかったりするシーンも多いのですが、女の子の「自我」が強いのでその部分も安心して読めます。そしてちゃんとそのお色気シーンが作風やストーリーとマッチしていて違和感がありませんでした。
絵柄もふわふわやわらかそうでとてもかわいらしいです。そしてこの絵柄でくせのある女の子を書くところがいいんですよ。
『このかけがえのない地獄』の中で一番面白かったのは「4番目のヒロイン」でした。登場人物がみんなラブコメ漫画の登場人物だと自覚している世界で、新しいヒロインが登場する話です。
ヒロインであることを受け入れ、最後に主人公に選ばれることを目指していた3番目のヒロイン。しかし彼女は主人公に媚びない4番目のヒロインと出会い、自らの行いに疑問を持っていく……というメタでアンチラブコメなストーリーが個性的でした。
ヒロインが自我を持ってしまったばかりに漫画はめちゃくちゃになってしまうのだろうけれど、反逆っぷりを応援したくなりました。
反骨精神といえば「黙れニート」も好きです。オタクの女性が働くものの、徐々に違和感を覚え……という話。
働かないより働くことの方が「普通」ではある。でもその「普通」は誰のためのものなのだろうか? 仕事中心主義は誰にとっても正しいわけではない、と思える終わり方でした。
最後の主人公の選択は正しくはないのだろうけれど、世の中には正しい人だけいていいわけではないんですよね。