今日の更新は、『棺担ぎのクロ。~懐中旅話~』です。
あらすじ・概要
大きな棺を背中に担いで、街から街へ、国から国へ旅を続けるクロ。コウモリのセン、人造人間のニジュクとサンジュとともに、自身に呪いをかけた魔女の行方を探していた。クロにかけたれた呪いの秘密とは……。
悲しくて抽象的なダークファンタジー
基本は旅人クロが街を訪ねて去っていく四コマ連作短編ですが、ページをめくるにつれて少しずつクロのことが明かされていきます。彼女は呪いをかけられていて、呪いを解くために魔女を探していて、どうやらその呪いが極まったとき、クロの命が危ないようで……。
伏線回収はかなりゆっくりですが、そのゆっくりしたネタばらしが心地よかったです。旅を通してクロが少しずつ自分に向き合ったように、読者である私もゆっくり作品に向き合えました。
連作短編のそれぞれのストーリーとしても、常に死の影が付きまとっています。生粋の悪人はめったに出てこない、絵本のような世界観なのに、ゲストキャラクターたちは何か悲しい思いを抱えています。牧歌的な世界観の中にちりばめられているふとした闇こそが、この作品をダークファンタジーに分類させているのだと思います。
ストーリーが進むと展開が観念的、抽象的になり、深く考えないと話がわからない部分が多くなっていきました。そこも読みごたえがあってよかったです。
魔女とは何なのか、クロはなぜ棺を担いできたのか、クロは旅の中で何を得てきたのか。それが明らかにされたとき、ひどく切なくて寂しい気持ちになりました。
しかし、この終わり方は必然で、キャラクターたちが全員最善の方法を考えた結果だからこそ、さわやかでもありました。
頭を使う漫画なのでなんとなく読んでいると置いてけぼりにさせられますが、ついていってよかったと思える作品でした。