今日の更新は岩田健太郎『感染症医が教える性の話』です。
あらすじ・概要
感染症医である著者は、性感染症を通して性教育に関わっている。性教育は何をすべきで何をすべきでないのか、性を学ぶことはどんな意味があるのか、医師の視点から語る。そして著者が提唱する「絶対恋愛」の概念とは……。
科学的な話かと思ったら観念的な話だった
もっと科学的な話かと思っていたら観念的な話で、思っていたものと違いました。この本も悪くはないんですが、私はデータとか科学的根拠が見たかったです。
とはいえ「感染症医から見た性教育」という視点から言えば参考にはなりました。やはり感染症の点で言えば複数の人間と性的に関係するのはだめだし、ピルには避妊効果はあっても性感染症を防ぐ力はない。
一方で、著者は自分自身の意見に拘束力がないこともわかっています。青少年はあまり性行為をしないほうがいいけれど、それを声高に主張することに意味を感じていません。「イエスでありノーでもある」というあいまいな態度が、実は誠実なのだ、というところが面白かったです。
しかしながら、私は著者の主張する「絶対恋愛」はあまり魅力を感じません。なぜかと言うと、それを実行できる人なんてごく一部だと思うから……。
「絶対恋愛」は簡単に言えば「ひとりの人間としか性行為をしない」こと。加えて、「あなたのために」生きるということ。
この「あなたのために」がかなり曲者で、相手のためを思ってすることが、相手の求めていること一致しないことが日常茶飯事なんですよね。そうでなければ、幸せなカップルはもっと増えていると思います。
このような、してほしいこととしてあげたいことが一致している前提の概念を、普遍的にしようと思うのは無理あるでしょう。
ひとつの意見としてはいいけれど、賛同はできないな……という感じの本でした。