あらすじ・概要
うつをきっかけに実家に戻った著者。しかし実家は、大変な汚部屋と化していた。家の大掃除をし、住める環境に戻した著者だったが、家族は相変わらず片付けられないまま。その上、掃除を巡って口論になる始末。疲弊する原因は、彼らの心の闇にあるようで……。
心の闇に気付くのはスタートラインに立つこと
まず言っておきますが、この本は「心の闇を乗り越えて片づけられるようになりました!」という話ではありません。「片づけをして家族(自分含む)の心の闇に気付いた……」という話です。なので話が終わっても問題は解決していません。
しかしながらこの作品は非常に身につまされる内容になっています。シングルマザーとして三人の子をなんとか育ててきた母、フリーターであることがコンプレックスの弟、コミュニケーションがとりにくい妹は、自分を否定されることを恐れています。だからこそ、まっとうなアドバイスですら拒絶してしまいます。
そして賽の河原のような家で、執拗なほど掃除を繰り返してしまう著者自身も、少しゆがみを抱えています。「汚部屋を掃除した」ことで、一気に家族の闇が見えてきてしまったのです。
正直オチらしいオチがないので、「作品」としては面白いとはいいがたいです。しかし、自信のなさから悪循環に陥ってしまう弱い人たちとどう付き合えばいいのか悩む著者の姿は、他人ごとではないんですよね。
私が引きこもりだったから言えるんですが、他人から見れば何気ないことで悪循環に陥ってしまうことってよくあることなんですよね。そして他人が、そこから救い出すことはとても難しいんです。できるのはきっかけを与え続けることだけ。
それを思うと、明確な救いのないままこの作品を閉めたのは、ある意味誠実だったと思います。家族は救われましたという嘘をつかない作品でよかったです。
ただ、「心の闇に気づく」ということは、スタートラインに立てたということでもあります。著者も家族も、前に進むことができればいいなと願っています。
あとこんなところで作者にアドバイスをしても仕方がないんですけれど、ちゃんと心療内科やカウンセリングにはお金を使った方がいいですよ! 問題があればメンテナンスするのは体も心も同じですから。