今日の更新は、時間SF・ファンタジーのおすすめ記事まとめです。
「時間」に関する作品をまとめた記事を書きたいと思ったものの、SFとファンタジーを厳密に分けることは不可能でした。そこで属性をごっちゃにして書くことにしました。
それでは行ってみよう!
- 小説
- 未来予知ができる女性と人型爆弾の恋『戦う司書と恋する爆弾』
- 読み進めるたびに不安になる『リライト』
- ウラシマ効果をテーマにしたラブストーリー『惑星童話』
- 怖さと寂しさが同居する刹那的ループもの『秋の牢獄』より表題作「秋の牢獄」
- 少年十字軍の時代へタイムトラベルして知識チート『ジーンズの少年十字軍』
- コールドスリープから目覚めた少女と双子の交流『きょうの日はさようなら』
- 時間にまつわる短編集『ある日、爆弾がおちてきて』
- 悲壮感が一切ないタイムトラベル『七花、時跳び!―Time‐Travel at the After School』
- 初出撃の日をループする初年兵の恋物語 『All You Need Is Kill』
- 江戸時代から来た侍がパティシエになる『ちょんまげぷりん』
- さまざまな要素をチャンポンにした楽しい作品『ぬばたまおろち、しらたまおろち』
- 『玩具修理者』より「酔歩する男」
- 未来から現在を書き換える能力者『円環少女』
- 漫画
- 映像作品
小説
未来予知ができる女性と人型爆弾の恋『戦う司書と恋する爆弾』
武装司書、ハミュッツ=メセタを殺すために体に爆弾を埋め込まれた少年コリオ。死者が本になる世界で、コリオは一冊の女性の本に出会う。コリオはその女性に恋をして……。
過去に存在した、未来予知ができる女性と恋をする。その女性も未来予知によってコリオの存在を知っていて……という、が卵先かにわとりが先か、のような不思議な恋物語です。
シリーズものですが一冊でもきちんと終わっています。
読み進めるたびに不安になる『リライト』
1992年、未来から来た園田保彦に出会った「私」は、彼を助けるために10年後に飛ぶ。しかし実際の10年後、過去の「私」は現れなかった。少しずつ歪み始める時間の秘密は、彼女が書いた小説にあるようで……。
起こったできごとに科学的説明はない、どちらかというとストーリーを楽しむタイプのSFです。
ストーリーそのものは時間軸があやふやで、読んでいるうちに不安になってきます。私自身も「ここ、どこ?」という気分になってきました。
一冊の小説によって、周囲の人がよりどころを失い、混乱する時間の渦に巻き込まれる。ホラーではないんですが、その物語はかなり怖かったです。
ウラシマ効果をテーマにしたラブストーリー『惑星童話』
天才宇宙飛行士アーノルドは、奇跡の人材として名をはせていた。しかし、高速で移動する宇宙船に乗るアーノルドは、浦島効果(ウラシマエフェクト)によって地上の人とは違う時間を生きている。そんな彼の前に、クレアという少女が現れた。
この作品は二本立てになっていて、ひとつが天才宇宙飛行士アーノルドの話、もうひとつはその息子リチャードの話になっています。
時間のずれにより親しい人がみんな死んでいく中で、それでもこの人生に意味はあったのだと実感できることがどれだけ救いか。愛と救済の物語でした。
怖さと寂しさが同居する刹那的ループもの『秋の牢獄』より表題作「秋の牢獄」
女子大生の藍は、自分が11月7日を繰り返していることに気づく。彼女は同じ境遇の「リプレイヤー」たちとつるみ、ループを楽しむ。しかし、「北風伯爵」という謎の存在がリプレイヤーたちを脅かしていて……。
いい意味でのゆるさがあるというか、リプレイヤーたちがけっこうのんびりしているのが新鮮でした。
それでいてところどころ不穏な要素があって、じんわりと不安になる。そのじわっとくる怖さが面白いです。
少年十字軍の時代へタイムトラベルして知識チート『ジーンズの少年十字軍』
知り合いの博士が開発したタイムマシンで13世紀に飛んだドルフは、そこで少年十字軍の子どもたちと出会う。子どもたちの悲劇的結末を阻止するためにドルフは奔走するが……。
過去で現代人が知識で無双する話、なのですが、「現代知識があっても13世紀の人は価値観が違うのですんなり受け入れられない」というところがリアルです。
少年十字軍って何? という人にも読んでもらいたい一冊です。
コールドスリープから目覚めた少女と双子の交流『きょうの日はさようなら』
双子のきょうだいの明日子と日々人は、いとこの今日子と暮らすことになった。彼女は、コールドスリープによって30年前からやってきた女子高生だった。今日子は、明るく振舞いながらも、30年後の世界でジェネレーションギャップに苦しむ。そんな彼女を双子は好きになっていくのだが……。
すごい伏線があるわけでもなければ、設定が尖っているわけでもない、ドンパチもドラマチックな展開もない。めちゃくちゃ地味なSFなんですけれども、その分堅実に描写を積み重ねていくところが面白いです。
時間のギャップをテーマにした少しセンチメンタルな物語です。
時間にまつわる短編集『ある日、爆弾がおちてきて』
『ある日、爆弾がおちてきて』は、時間SF短編集。
時間のずれ、長命な神様と人間の感覚の差、自分自身の精神年齢が幼くなっていく病気など、さまざまなアプローチから「時間」を描き出していきます。
同時に少年少女の青春や恋心も加えられていて、ときめきが止まりません。
一話が短く、文章もポップで読みやすいので読書に慣れていない人にもおすすめです。
悲壮感が一切ないタイムトラベル『七花、時跳び!―Time‐Travel at the After School』
ある日突然、タイムトラベルができるようになった七花。その先輩の「僕」は、七花とタイムトラベルを繰り返す。それはいつも、とほほな展開になって……? 学校を舞台にしたタイムトラベルコメディ。
悲壮感が一切ない、わいわいがやがやしたコメディです。へらへら笑って読めます。
その反面、ストーリーは首をひねらないとわからないようになっている部分も多く、噛み応えがありました。
タイムトラベルを繰り返して時間がややこしくなっていくのが、主人公ふたりの小気味いい会話と合わさって、すごく愉快でした。
初出撃の日をループする初年兵の恋物語 『All You Need Is Kill』
人間がギタイという謎の生物と戦っている未来。初年兵のキリヤ・ケイジはギタイとの戦いの中で二日間を繰り返すループに陥る。何度も初出撃をこなす彼は、ループを脱出することができるのか。
この作品の元ネタのひとつは、ビデオゲームのリセット。淡々とした文章も相まって、本当にそういうゲームをプレイしているような気分になってきます。
そして「戦場の雌犬」リタとのループの中だけでの悲恋。ロマンチックすぎます。これが一番美しい結末だということはわかっていますが、悲しすぎてつい幸せなふたりを想像してしまいます。
江戸時代から来た侍がパティシエになる『ちょんまげぷりん』
江戸時代からタイムスリップしてきた侍、安兵衛はシングルマザーのひろ子に拾われ、居候をすることに。そこで家事をしながら生活しているうちに、安兵衛はパティシエの才能を開花させ……。
シングルマザーと江戸時代の侍、奇妙な取り合わせがなぜかうまく行ってしまう不思議なストーリー。
パティシエの仕事が忙しくなるにつれてひろ子とすれ違う安兵衛。お互いに「働くとはどういうことか」を問い直すラストは前向きで好きです。
さまざまな要素をチャンポンにした楽しい作品『ぬばたまおろち、しらたまおろち』
幼馴染の大蛇と結婚の約束を交わした少女、綾乃。村祭りの舞い手に選ばれた綾乃は、祭り当日に謎の男に襲われる。間一髪で彼女を救ったのは、ほうきに乗った魔女だった。綾乃はそのまま、魔女たちが学ぶディアーヌ学院に入学することになる。
民俗学、学園もの、タイムトラベルなど、好きなものを全部乗せしてそれでいて物語として楽しめるものになっている作品です。
タイムトラベル要素は「あ! そういうことか!」という納得感があるのもよかったです。
『玩具修理者』より「酔歩する男」
飲み屋で酒を飲んでいた血沼は、見知らぬ男に声をかけられる。小竹田という男は血沼を知っているという。血沼が問い詰めると、小竹田は恐ろしい物語を述べ始めた。ふたりはかつて、ひとりの女を取り合ったことがあったという。
とてもSF色の強いホラー。時間の連続感覚を失い、さまざまな時間軸をさまよう恐怖が描かれています。荒唐無稽なはずなのにどこか生々しさがありました。
時間跳躍を繰り返しどこにも行くことのできなくなった男の物語です。
未来から現在を書き換える能力者『円環少女』
魔法を無力化する力を持つことから、あまたの魔法世界から「地獄」と見なされている地球。そこに落とされた魔法使いの少女メイゼルが、チートな魔法使いたちとやり合うバトルファンタジー。
この作品では、「再演大系」と呼ばれる、世界を一冊の本としてその内容を書き換えることで魔法を使うキャラクター、きずなが登場します。物語のキーパーソンである彼女によって、最終決戦はとんでもない「円環」が出来上がります。
時間ものメインの作品ではないんですが、ラストは一読の価値ありです。
漫画
記憶を飛ばして未来にたどりつく『アイリウム』
一定の期間記憶を飛ばす薬「アイリウム」。その薬を手に入れた人々は、少しずつ運命を狂わされる。主人公とシチュエーションを変えながら展開する連作短編。
「記憶を飛ばす」ことが、登場人物の主観としては「未来に飛ぶ」感覚なのが面白いです。記憶を失った間の自分自身は、案外幸せなことも。
直接時間がどうこうなるわけではないんですが、実質的な時間SFになっている作品です。
『蟲師』より「露を吸う群」
「蟲」と呼ばれる不思議な生き物がいる世界。蟲師のギンコは、虫にまつわる事件を解決するのが仕事だ。ギンコは依頼によりある島へ渡る。そこでは、「生神」になってしまった少女がいた。
自分の体の中の「時間」が変わってしまった人々。普通の価値観では「元に戻ってほしい」と思いがちですが、本人たちにとってはそうでもないようで……。
ビターな終わり方ですが、「普通」の価値観が揺らぐような作品でした。
『蟲師』2巻に収録されています。
『ドラえもん』より「ドラえもんだらけ」
どら焼きと引き換えに、のび太の宿題を引き受けたドラえもん。しかしひとりでは終わりそうもなく、2時間後、4時間後、6時間後、8時間後の自分をタイムマシンで呼び出し、一緒に宿題をすることに。
ドラえもんの中でもかなり物騒な話で黒い笑いが漏れます。睡眠不足でキレているドラえもんたちの事情が分かってくるにつれて同情してしまいました。
『ドラえもん』てんとう虫コミックス5巻に収録。
映像作品
タイムマシンを巡るコメディ『サマータイム・マシン・ブルース』
うだつの上がらない大学生たちが所属するSF研究会。彼らの前に謎の機械が現れる。それがタイムマシンだと知った彼らは、壊れたリモコンを取り戻しに過去へ向かった。しかし歴史が変わってしまうと大変なことになると気づき……。
男性キャラクター陣が全員ばかで笑ってしまいます。スケールは壮大なのに、やってることはお祭り騒ぎという。
最初は連続してよくわからないことが起こり、「これはどういう作品なんだろう」と思わせてから、タイムマシンが登場し、そこから次々に伏線の回収が行われます。その展開が上手くてぐいぐい話に引き込まれていきました。
過去の自分が自分を救う『空の青さを知る人よ』
事故で両親を失い、二人で暮らしてきたあかねとあおいの姉妹。「東京に出てバンドをする」と言うあおいは、自分に音楽を教えてくれた相手、しんのと再会。しかしシンノは、子どものころ出会ったままの姿だった。一方あかねは、音楽イベントにやってきた演歌歌手のバックバンドに、かつての恋人である慎之介を見つける。
若いゆえのまっすぐさと明るさを持つしんのと、東京で人生の闇を味わい、疲れた大人になってしまった慎之介。これは過去の自分と現在の自分が、お互いを受け入れあう話です。
自分は青春時代の自分から見て、かっこいい大人だろうか? と自問自答してしまう作品です。
伏線が丁寧な時間エンターテインメント『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』
「好きなだけかき氷が食べたい」という動機で流氷に向かったのび太とドラえもん。その流氷で謎のリングを見つける。10万年前に凍ったそのリングを持ち主に返すため、ドラえもんたちは10万年前の南極に飛ぶ……。
この作品は一種のタイムパラドックスストーリーです。SF的には珍しいタイムパラドックスではないけれど、きっちり伏線を張って最後に回収するお手並みは鮮やかでした。
そもそもプロモーション用ポスターそのものが伏線になっているというあたり、この展開へのこだわりが感じられます。この映画を見た後はポスターもチェックしてみてください。
舞台の上で ふたつの時間が交錯する『舞台 「刀剣乱舞」ジョ伝 三つら星刀語り』
歴史修正主義者から歴史を守る刀剣男士たち。審神者から近侍の地位を賜った山姥切国広は、小田原にていないはずの遡行軍に襲われる。遡行軍がいないはずの小田原に、なぜ敵がいるのか。その謎を解くために、舞台はその時代に残り、調査を始めるが……。
舞台作品なので厳密には映像作品ではないんですが、配信やDVDで視聴可能なので上げました。
詳しく語るとネタバレになってしまう話なので感想が言いにくいんですが、とりあえず時間SFが好きな人は見てほしいです。あと、きれいに終わっている作品なのでここから見ても大丈夫です。
閉じた時間の中で走る魔法少女たち 『魔法少女まどか☆マギカ』
中学生のまどかは、少女が魔法少女になって戦っている姿を目撃した。白い生き物、キュゥべえから「願いを叶えるから、魔法少女にならないか」という誘いを受けるが、転校生のほむらにそれを止められる。魔法少女の真実とは……。
これも詳しく話すと露骨にネタバレなので、感想が言いづらいですね。
少女同士が命を懸けて戦い、執着したり諦めたり……の世界に、時間SF要素が混じる作品です。その執着への混ぜ方が素晴らしいんです。
以上です。気になる作品があれば見てみてください。