あらすじ・概要
元AV女優で、統合失調症を患う著者は、20歳以上年上の男性、ボビーと恋に落ちる。一緒に暮らすふたりは、けんかをしつつも愛し合っていた。しかしヨガを始めたことをきっかけに勝手に減薬した著者は、統合失調症を悪化させ、歩道橋から飛び降りて大けがをしてしまう。
下ネタ満載の純愛と統合失調症の中で
闘病ものかと思ったらラブストーリーでした。
病気ゆえにいつも行動がおかしく、妄想や幻覚に悩まされている著者を、恋人のボビーさんは献身的に支えます。
しかし年の差ゆえに、「彼女にはもっと若くていい男性がいるのでは」という思いが抜けず、それで何度もけんかをしてしまいます。
という純愛小説のような恋愛描写の一方で、作品の中では下ネタがめちゃくちゃ多いです。もともとAV女優をやっていた話もそうだし、ボビーさんとの性生活も正直に描かれています。最初はちょっと引くくらい。
しかし作品の中盤で著者が大けがをしてから、この性的描写の意味がちょっと変わってきます。けがで顔が変わってしまった著者を、ボビーさんはまだ性的に愛していることがわかります。その事実に胸を打たれました。
著者も病気のことを踏まえてもいつも変だし、ボビーさんもやくざな仕事をしていた過去があって、問題のない人ではありません。
しかしそんなふたりが、支え合い、愛し合うことができるというのは、ひとつの救いでした。
あとけがの治療のために向精神薬を抜いたとき起こった、何ページにも渡る幻覚や妄想の描写もすごかったです。脈絡なくころころ変わる妄想の中で、著者のボビーさんへの愛や人生への不安がにじみ出ている気がしました。シュルレアリスム絵画みたいだ……。